綺麗な花に棘がある。【茅ヶ崎至】 (ページ44)

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うどんを食べている手を止めてまで首を捻った卯木さん。そこまで真剣に考えなくてもいいんだけどなと思いながら、私も箸を止めた。

「俺実はさ、女の人が苦手なんだよね。」

『えっ』

「だから、特になんとも思わないかも。監督じゃなかったら関わってないと思うし。」

『え、そうなんですか！？じゃあ…私ってすごく馴れ馴れしくないですか？』

「今更だろ。お前は別に完全な他人じゃないし、会社の後輩だからな。」

『…そういうもんですか？』

「他の社員に比べて、わかりやすく媚び売ってくることもないしな。」

『まぁ、卯木さんや茅ヶ崎さんに媚びを売ったところで給料があがるわけではないので。』

「そういうところ。」

『はぁ…』

「それに…」

ちらっと目線を私に向けた卯木さんが、手を伸ばして私の唇の端を撫でる。突然の出来事にピシッと体が固まって、いたずらっぽくにやりと笑う卯木さんから目が離せなかった。

「一つ屋根の下で夜を共にしただろ？……米粒付いてた。」

『その言い方だとかなり語弊があるので言い方を変えてください。……ありがとうございます。』

「別に間違いじゃないだろ。」

びっ………くりした！？！？！？！？！？何かと思った！！！！茅ヶ崎さんのことがあってから全部が敏感になってしまう。どう考えても女性が苦手な人がやるようなことじゃなくない？そう思いながらも平静を装って水を一気に口に含む。

「ご馳走さま。」

『(相変わらず食べるの早いな)』

「さっきの質問。」

『え？』

「監督さんが監督じゃなかったら、どう思うかってやつ。茅ヶ崎にも同じ質問してみれば？」

『…え、何でですか？』

「俺の答えより茅ヶ崎の答えの方が参考になると思うよ。」

『…………参考とは？』

それ以上何も答えてくれない卯木さんが、私を置いて食堂を出て行く。……結局、私って何に悩んでいたんだっけ。何とも言えないもやもやが胸の中を支配した。

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