3 ページ3
.
「入学した時からずっと好きだった先輩に告白したの…」
「うん」
「遠くの大学に行くって聞いてたから告白するなら今日しかないと思って、」
「うん」
「委員会の時くらいしか話した事ない私じゃ振られるって分かってたけど…っ、」
「うん」
「でも……やっぱり辛いー…」
大好きだった先輩の顔を思い出して引っ込みかけていた涙がまた溢れる。
貸してもらったハンカチを目元に当てて「うぅー」と声を出して泣く。
「そんなに好きだったんだ?」
「うん、…好きだった…」
「でも想いを伝えられたならよかったんじゃない?」
「…………」
「伝えないまま後悔するよりずっといいよ」
そう言いながら私の丸まっている背中を優しく擦る。
大きな手が心地よくて安心して、少しずつ気持ちが落ち着いて来た。
「Aさんならもっといい人いるよ」
「…、ありがとうっ、」
隣の男子が「いーえ」と言ってから立ち上がった気配がした。
足音がどんどん小さくなっていくのを聞きながら、やっと顔を上げる。
「……誰だったんだろう」
相手は私の名前を知っていた。
手元に残ったハンカチを見つめて何処かに名前が書いてないか探すけど、高校生にもなってわざわざハンカチに名前書く人はいないか…と我に返ってそれも諦めた。
でもこれ返さないと…
手がかりは一瞬香ったあの香水の匂いだけ。
.
148人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:京 | 作成日時:2019年2月24日 23時