ゝ ページ11
ああ、と思う。
それは落胆だったし、感動だった。
このような鬼もいたのか、と思った。
人間離れしたその剣筋は、鬼の膂力によるものではない。
結果的に鬼であるから、鬼として強いだけ。
これはただ、数十……否、
血肉を食らってまでも足掻いた、成れの果て。
忌まわしき剣鬼。
Aの知りうる中で、最も優れた剣士。
「浅慮に罵った非礼を詫びる」
す、と。その黒い瞳に射抜かれて、黒死牟は動きを止めた。
Aは──上弦の鬼を前にした鬼殺の剣士は、なんたることか、頭を下げたのである。髪がサラサラと流れて真っ白なうなじが見えた。
噛みつけば殺してしまえると思うのに、隙がないから怯む。
いよいよもって、この女のことが分からない。
「……今日ほど己の無力を呪ったのは、久しい」
「何を、」
「御身が鬼に堕ちる前に、剣を交えたかった」
Aはそっと頭を上げた。
刀に手をかけ、名も知らぬ鬼を見つめる。こちらを見つめ返す六つの目に映る自分の表情が、どこか子どもっぽくて嫌になる。
切らねばならぬ、と思った。
ああこの、美しかったヒトが、これ以上歪まないように。
世界のために死ねなどと誰かが思ってほしくはなかった。もう手遅れだとしても堪らなかった。身悶えするほど悔しかった。
傲慢だとは分かっていた。
この後悔に呼応するように、うなじの辺りがゾワゾワして熱を持つ。
「何ゆえ領分を侵された」
「……知った口を」
「その先に厄災ありと、知らぬわけでもなかろうに」
「…………お前に、理解……出来るものか……」
それはきっと身勝手なのだろう。
顔を背けたくなるほどに悍ましくて、どうしようもなく愚かしい。
きっと誰にも許されない。
でも、……そのひたむきさをAは責められない。
だってそうして生かされた。
弟は、人を殺めてでもAの幸福にしがみついた。
どれほど傲慢な願いでも、どんなに独り善がりな願いでも、それを否定したくはない。手を伸ばし続けた、それそのこと自体は、尊いものであるはずだ。
「虚しいな、お互い」
琵琶の音が朝霧を鋭く裂いた。
去り際に放たれた一閃がAの髪を落とす。
朝日に照らされたAの首筋に、奇妙な痣が這っていた。
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海神 瑠花(プロフ) - 再会ですか！？わーー！！このシリーズすっっごく好きで更新あったりしないかな〜って常々楽しみにしていたので嬉しいです！ありがとうございます楽しみにしてますね！！ (6月27日 7時) (
レス) id: 047a8ff329 (このIDを非表示/違反報告)
アホ毛50%(プロフ) - ノルンさん» 再開していきます…！応援ありがとうございます♡ (6月21日 22時) (レス) id: d38558f5f7 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 更新されとる！！！！！！！ありがとうございます！！！ (6月21日 7時) (レス) @page7 id: 01548bf821 (このIDを非表示/違反報告)
shashakidayo(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて何度も読み返してます！更新の予定はありますか？！ (2021年1月3日 1時) (レス) id: 2928414592 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - スピード、センス、ギャグ、ノリ、何をとっても最高に面白かったです！！続きも楽しみにしてます!!! (2020年7月6日 17時) (レス) id: 6412d0e74c (このIDを非表示/違反報告)
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