無双系同僚が距離感を掴みかねている【鬼滅の刃】

訓練であって拷問ではない ページ2

　
　
　
　善逸の目はどこまでも死んでいた。
　タンポポ少年は昏倒した筋肉ダルマこと宇髄を引きずりながら、心を殺すことで生命を【守護(まもっ)】ている。

「万全の体というのは久しくてな、加減がきかなんだ」

　倒れ付した煉獄を前にAは平然とそう言う。数百年ぶりに復活した物の怪？
　つーかコレ機能回復訓練だよね？
　身体破壊拷問とかではないよね？


　煉獄、宇髄共にそれぞれ一ヶ月以上眠っていた身なのだが、多少痩せた以外に身体に異常はなかった。勇の血鬼術で眠っていたのだから、体の状態も彼が仕組んだものなのだろう。
　……ああ、本当に。ただあなたを助けたかっただけなのですねと。そうしのぶが告げたときの、Aのおだやかな顔といったら。
　その場でしのぶは心臓を押さえて倒れた。

　閑話休題。

　とにかく、柱であろうとも機能回復訓練は必須。しかし蝶屋敷の女子たちでは柱の相手は務まるまい。ではしのぶが……ともいかない。彼女も多忙なのだ。
　さてどうしたものか。
　というところで名乗りを上げたのが、誰あろうAだった。


　無惨由来(らしい)のよく分からん薬を躊躇なく飲み回復したAであるが、まあ二年サボっていた事実は消えないしなぁと思ったらしかった。
　かつての鋭さを取り戻した梵柱に「やれるな？」と聞かれてしまえば、はい以外の選択肢はない。宇髄と煉獄は思った。

　あ、これ殺されるやつかな？と。
　A的には、この機会にコミュニケーションを取るぞ！と意気込んでいたたけである。



　そして始まった機能回復訓練。

　煉獄はゴリゴリに体育会系である。それはいい。しか薬湯をぶっかけられるたび「(手合わせ)ありがとうございます！」と叫ぶので、あわや蝶屋敷が特殊プレイの会場となりかけた。
　宇髄とAのスピードについてこれず、三つめの湯呑みが割れた。
　この辺りで三人は鬼ごっこへと訓練内容を変えた。

　Aが逃げる側だといつまでも終わらない。しかし捕まえる側に回ると、軽すぎる体にはしゃいで全力でタックルしてしまう。どう頑張っても吹き飛ばしてしまう。ちょっと申し訳ない。
　ので、吹き飛ばされた柱のクッション兼、万一の時に走ってしのぶを呼べる足の速い隊士が必要。
　だから善逸は駆り出されちまったのだ。南無。

　善逸からしてみれば悪夢だった。
　ちょっと前まですげー優しかった庇護欲掻き立て儚げお姉さんが、突然大の男二人を伸しているのである。普通になんの天罰かと思っている。
　

そんなん無くても勝てるので……→←梵柱は可愛がりたい

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