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 四月一日さんの白魚のような指が、ポロリ。箸を落とした。その失敗に、彼女は口元に手をやってはにかむ。こんな些細な仕草が俺にはものすごく上品に思えて、思わず顔に熱が集まる。
 彼女は痺れるほど美人だし、飯炊きもすごく上手い。優しいし、裏表のない匂いがする。

 守ってあげなければ(・・・・・・・・・)、と思うような。
 儚い匂い(・・・・)

 ……柱の人たちから、なにか、こう、困惑?の、ような……? 驚きのような……虚無のような……。なんとも言えない複雑な匂いがすることだけが、不思議だった。

「……ねえ、この状況おかしくない?」

 箸を換えに四月一日さんは席を立っていた。その隙にと言わんばかりに、善逸はやけに大きな小声で耳を引っ張ってくる。
 おかしいって、一体なんだと言うんだ。
 そりゃ俺たちみたいな一般隊士が柱と食事なんて、珍しいことなのかもしれないが。

「ねえ風柱さん見てみ?さっきっから一度もまばたきしてないよ?ねえヤバくない?お茶碗永遠に凝視してるよ?」
「そういう年頃なんだろう。食事中にあまり大声を出しちゃいけないぞ」

 軽く窘める俺に、善逸は今にも立ち上がりそうな勢いで暴れ始める。

「どういう!?」
「善逸!埃が立つ!」
「お前聞いたことあんのか『ウチの子最近思春期で炊きたてご飯を凝視してるんです〜』って話す奥様方を!」
「山育ちだからちょっとないな……」
「どこで育ってもねえよ!」
「決めつけはよくないぞ!」
「見ろお前!お前の兄弟子ヤバイぞ?人間の表情筋の限界越えて“無”だぞ?」

 指を指そうとするのを多少無理矢理止めながら、それに関しては、と頷いた。

 義勇さんてば、嫌いな食べ物でもあるのだろうか。残すのは失礼だと困っているのかもしれない。こんなに美味しい料理でも、食材の好き嫌いまではどうしようもない。

「実は……俺もおかしいと思ってたんだ」
「アッだよねだよね!?」
「匂いまで虚無だし」
「早゛く゛言゛え゛よ゛ォ゛ーーっ」
「そういうこともあるかと思って……」
「お前柱合会議のこと根に持ってて適当な対応したろ!?」

 怖かったんだぞ!と泣き出した善逸の言うことには、ドコドコバンバンと太鼓のような、尋常ならざる心音がここには満ちているという。
 なるほど、それはおかしい。
 と思った、丁度そのとき。四月一日さんが戻ってきた。俺は初対面で人との関係を聞くのでは探っているようで不躾かと考え、こう聞いた。

 二年前、あなたはどのような人だったのですか。


 

ゝ→←食卓バイオハザード



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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