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 無我夢中だった。
 頭の中をからっぽにしたまま、ただ、肺を満たす。酸素を吸って駆け出す。身体中をわななかせる。

 そうする必要があったので、宇髄の肩を借りた。
 というか踏み台にした。
 満身創痍の宇髄の体が突然の衝撃に耐えられるかは、ほとんど賭けである。そんな勝負に出なければならないような状況だ。


 Aの靴裏が宇髄の肌に触れた。


「う、ぐ……」
「!」
「オオッ!」

 宇髄は倒れるどころか、その二つ足を踏ん張った。ぐっと膝を使う。それは自分の脚が伸びたような感覚で、完璧なサポートだった。
 Aは、自分が想像していたよりずっと高くへ跳ねた。

 咄嗟に振り返った一瞬、宇髄は笑った。

 傷だらけで、片目が潰れていた。あの派手な美丈夫の見る影もない。白銀の髪は血で汚れ、砂ぼこりに固まり、痛々しい姿である。
 突き飛ばせば死ぬような有り様で、……



 落下につれて風を切る音に、鋭い呼吸の音が混ざる。

「──梵の呼吸 伍ノ型」

 重力込み。自重をすべて乗せた、超広範囲、一定方向の斬撃。それはあらゆる攻撃を彼女の後ろへ届かせない。


護色幔幕(ごしょくまんまく)









「いいえ、存じ上げません」

 産屋敷邸にて。
 Aはキッパリとそう言った。

 あの場にいた鬼殺隊士は五名のみ。宇髄の奥方が三人。戦っていたのはそれだけであって、女の剣士などいなかった──

「A」

 耀哉の青白い指先がAに触れる。
 かたく握り締めた手のひらは拒絶の意思だった。それを解きほぐすように、けれど尊重するように、限りなく優しい手つきがAをくるむ。

「考えがあってのことなんだね」
「……」
「いいんだよ。話せとは決して言わない。ただ私たちは、人々のために戦ってくれた君に」
「二度も言わせないでくださいませ」

 その手を、やさしさを、振り払う。

 甘えてしまいそうだからだ。頼って、縋って、ダメになってしまいそうだから断ち切った。
 昔から、諦めることだけは得意だ。

「私はなにも存じません」
「……ありがとう、A」

 ぬばたまの目が痛みに耐えかねるように見開かれる。
 「やめて」という声は、悲鳴のようだった。


「私がほんとうに戦っていたら、誰も彼も死ななかったわ」

化野→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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