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猫も杓子もラリパッパ ページ4

 
 
「……」
「……」
「…………」
「…………」

「……………………」

 沈黙……ッ!圧倒的沈黙……ッ!

 お館様が退室なさり、陽光差す一室には十人が黙して座している。柱たちは正気を取り戻していて、それが逆に辛かった。A(仮)の前で大胆になれなんだ。
 (仮)というのは、まあ単純に「え?これ本当に四月一日さん?」という疑念ゆえである。なので今だ交わされた言葉/Zero。積もる話もあるだろう、とお館様は仰っていたが、積もるどころか更地。むしろ抉れる勢いである。

 ……というか、なんだ?あれは。
 幻覚か?血鬼術の類いか?

 立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。ただし喋れば日本刀。放つオーラは不動明王。刀振るわば天下無双のA。
 それが、あんな、……まるで、ただの女……いいやもっとひどい。下女のような振る舞いだ。彼女の矜持が許すものか。富士より高きは日の本に四月一日Aのプライドひとつと謳われたくらいである。

(……え?誰も話さないんですか?)
(何を話せば?)
(つーか誰が先陣切るんだよ)
(呼び掛けるとして……なんと呼べば良いのだ。あの女人は一体……)

 必死のアイコンタクトだった。
 柱たちはこの局面にあって神経を研ぎ澄ませ、声を介さないそのやり取りはほとんどテレパシーであった。ここまで協力的な振る舞いは中々ない。

 いっそのこと罵ってくれたらな、と思う。みんな思っていた。氷点下ブッチ切りのあの目あの声で……
「雁首揃えて、それが柱の振る舞いか?」
 あっ怖ッ。……いや、うん。でもこっちの方が自然体で話せる自信がある。などと、柱たちは半ば空想に逃げていた。
 しかし当のAはただ微笑んで、アクションを待っているようであった。


「……息災なによりだ。四月一日」

 先鋒を買って出たのは悲鳴嶼だ。
 鬼殺隊現最強にして、最年長である。Aとの付き合いも長い。そして長く戦場に立ってきた。それだけ精神も屈強だ。多少のことなら、いや先程は少し取り乱したが、もう何が来ようと心をおだやかに──

「はい、皆さまもお変わりなく」

 それは余所行きの礼節であった。
 悲鳴嶼の知らない態度だった。

「悲鳴嶼様におかれましては、ますますご健勝のご様子。嬉しゅう存じます」
「……い、」
「はい?」

「四月一日は私に謙譲語など使わない……」

 座っていたとはいえ二メートルを越す長身が倒れ込んだのを、他の面々は戦々恐々とながめることしか出来なかった。

 

ゝ→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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