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逆さ鱗の逆撫で ページ14

 
 
「俺は不死川のように甘くはないぞ」
「?はい」
「先日は不意をとられたが、なに、分かってさえいればどうということはない。ただの女がいるというだけだ。それにしたってずいぶん家仕事に慣れているようだな。針に掃除に飯炊きか。二年前から練習でもしていたのか。どこぞに好い男でも?」
「ちょっと?妄想癖もいい加減にしてください伊黒さん。うちは神経衰弱の治療は専門外なので」
「は?」
「あっ、け、喧嘩しないでっ」
「四月一日さんは色恋にうつつを抜かしたりなんてしません」
「うつつとは何だ。随分な言い様をする。こ、……恋や愛の何が悪いなどと俺は言っていない。言っていないからな甘露寺」
「え?」
「はいはいご苦労様です。さ、四月一日さん、上がってください。今お茶をお持ちします」
「いえ、それは私が……」
「お持ちします」
「あの」
「さ、四月一日さん、上がってください」
「……」
「今お茶をお持ちしますから」
「し、しのぶちゃん」
「胡蝶お前……」

 クエストを引き受けないと会話が進まないタイプのNPC?

 さて本日は蝶屋敷でのお勤めを、と出向いたAを迎えたのは、蛇・蟲・恋の三柱であった。
 始めこそ息をひそめていた彼らは、けれど「本日はよろしくお願いいたします」とニッコリ挨拶をされて、何やら吹っ切れたようだった。ガンガン絡んでくる。
 それはちょっとした面倒臭い騒ぎだった。
 アオイたちの雑務をAが手伝おうとする度に、やいのやいのと解釈論争が入るのである。やれ四月一日さんにそんなことはさせられないだのそれが今の仕事だのお手伝いくらいならどうだの。

 アオイは……いうか蝶屋敷のものたちは、もう曖昧に笑うしかできなかった。面白いほど生気のない笑みであった。
 申し訳ないなぁ、と思う。
 影から見守るなほたちと目があった。Aはそれで、心得たとばかりに手をパンと打った。

「では皆でいっしょに」
「オイやめろ四月一日Aは至高にして孤高頂点は常に一人だ!群れるな!!」


 ……伊黒がこれほど大きな声を出すのは初めてだった。ハァハァと肩を揺らして息を乱す様には、全集中の常中もなにもあったものではない。

「……ええと、では、私が一人で」
「やめろ四月一日Aが雑用だと!?首を切るぞ俺は」
「で、では……私はいったいどうしたら……?」

 正当な疑問だ。
 伊黒はグッ、と喉に言葉をつまらせた。


「……俺がやる」
「そんな、」
「おま……お…………あなたは、甘露寺と胡蝶とでも喋っていろ」

 
 

ゝ→←ゝ



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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アホ毛50% | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年10月29日 0時

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