眩きは残像 ページ1
……凛々しき女剣士であった。
齢のほど数えで二十三。まだどこかあどけない、少女然としたうすもも色の残る白皙の人であった。背筋をしゃんと伸ばせども小柄で……細い腰まで伸びた黒髪を結う仕草など、クラっと眩暈を起こさせるような美貌である。
しかし本質はそれではない。
美しさで名が残るほど、鬼殺隊は腑抜けていない。
──その眼差しの前で鬼どもは敗北を予見する。
一閃にして切れぬモノなく、太刀筋は大いなる雷霆のようだという。およそヒトの領分を外れた女である。取り乱すことがなかった。
何もかもに無駄がなく、完成され、一陣の刃のような鋭い剣士であった。
明日の命も知れぬ戦場だ。強い、というただそれだけが、彼女を福音のようにも災いのようにも見せていた。
魂を落っことしたみたいに見惚れてしまうのだった。
さて問題点がひとつ。
それはもう、単純な話。
四月一日Aは怖かった。もう誰がいつどこからどう見ても怖かったのだ。鬼が恐れる目付きとオーラを恐れぬ人間がいるとして、果たしてソイツは人間なのか? 砥ぎたてホヤホヤの刀も真っ青の、触れれば切れる雰囲気である。
二十四時間、三百六十五日、年中無休。恐怖のコンビニエンスストアがバーゲンセールだった。新人の中には漏らしかけるやつもいる。
……現柱たちの中にも、彼女に指導賜り泣かされた者がいるとか、いないとかいるとか。
そんなものなので、威風堂々とした戦いぶりは散々なほど伝わっているが、如何せん、個人としての情報はほとんどなかった。彼女と目を合わせてまともに話せた人物と言えば、お館様こと産屋敷耀哉くらいのものなのだ。
好きなものも嫌いなものも、家族のことも、ふるさとも住まいも、誰も知らない。
だから、追いかけることができない。
二年前。
Aは突如として柱を……というか鬼殺隊をやめた。
伝説というのはそのためだ。本人がいなくなって、それでも忘れられずに語られている。
隊を抜けたことについて真相を知るは産屋敷耀哉のみ。
消息までパッタリ途絶えてしまって、会いたいと思うのに叶わなかった。せめて別れの挨拶をすることさえも。
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アホ毛50%(プロフ) - 玲さん» マジで有難いです……やる気出ます……がんばります……(ToT) (2022年10月7日 20時) (レス) id: a42aa73c2c (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - どうかお身体にはお気をつけてご無理はせずに更新、活動していただけましたらと思います……!ゆっくりのんびり待っております。想像以上に長くなってしまいすみません……!!長文乱文等失礼しました。応援しております……! (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - 喉からどこかの鳥の声でも発してしまいそうでした。続編……書いてくださる…………?夢でも見ているようです。この幸せを沼鬼に負けないくらいの気持ちと勢いを持ってギリギリ噛み締めます。(?)(申し訳ありません次で終わります) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - もう超大好き!!!となっていたというか今も勿論のことなっています書いてくださりありがとうございます。 そうして今もまた読み直していたら、文章が変わっている……!?と気付き更新日時を確認しましてア゜〜〜!!!と大歓喜のあまり(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
玲(プロフ) - コメント失礼致します。何回も何回も読み直し、そのたびこの作品は本当に面白いなあ、と思い、読了すると大きすぎる満足感と言い表し難いほどの感動が一気に込み上げてきまして、その感覚は頻繁に感じるものではなかったものですから、本当にこの作品はもう……(続) (2022年10月7日 16時) (レス) @page45 id: 94771a4103 (このIDを非表示/違反報告)
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