検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:27,216 hit

13滴 ページ14

.




『ねぇレオ』


「ん?」





作曲をしているレオに私は話しかける。私は今から言うことを本当にレオに言ってもいいのかと迷うが意を決して私は重たい口を開いた。





『あのね、私はきっとレオよりも先に死んじゃうの』





そんな私の言葉にレオは目を見開いてこちらを見つめる。




誰かに言われたわけでもない。ただただ、私が勝手にそう感じた、それだけ。けれどそれは何故かレオには伝えておかなきゃいけないと思ったのだ。





『だからね、もし私が死んだら私のこと忘れてね』





私は笑顔でそう言う。そんな私に対してレオは有り得ないという、まだ信じきれない表情で私に問いかける。





「A、死んじゃうのか?」


『うん、あと一年……ううん、半年かもしれないや』





私はそう言って笑う。
もしかしたら、それよりもずっと早くなるかもしれない。けれど、私はそれでも十分生きたのだ。なんせ私はレオよりもずっと前からここにいたから。




そう言うとレオは下唇を噛んで、今にも泣きそうな表情を見せる。あぁそんな顔させたかったんじゃないのになぁ。





「怪我のせいなのか?」


『それもあるかな』





けれど随分と前から私はもうすぐで自分が死ぬことを分かっていた。知っていた。だから今更何とも思わないのだ。





『だからさ、私が死ぬときまで一緒にいてくれないかな?』





自分でも我儘な願いだと分かっている。知っている。だけど、君とはこの身が朽ち果てるまで一緒にいたいと思ったから震えた声でそう言った。





『だめ、かな?』


「っ、おれも一緒にいたい!」





私はそんなレオの返事に安心して『ありがとう!』と笑ったのだった。

14滴→←12滴



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
60人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ぽぽ | 作成日時:2021年1月30日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。