13滴 ページ14
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『ねぇレオ』
「ん?」
作曲をしているレオに私は話しかける。私は今から言うことを本当にレオに言ってもいいのかと迷うが意を決して私は重たい口を開いた。
『あのね、私はきっとレオよりも先に死んじゃうの』
そんな私の言葉にレオは目を見開いてこちらを見つめる。
誰かに言われたわけでもない。ただただ、私が勝手にそう感じた、それだけ。けれどそれは何故かレオには伝えておかなきゃいけないと思ったのだ。
『だからね、もし私が死んだら私のこと忘れてね』
私は笑顔でそう言う。そんな私に対してレオは有り得ないという、まだ信じきれない表情で私に問いかける。
「A、死んじゃうのか?」
『うん、あと一年……ううん、半年かもしれないや』
私はそう言って笑う。
もしかしたら、それよりもずっと早くなるかもしれない。けれど、私はそれでも十分生きたのだ。なんせ私はレオよりもずっと前からここにいたから。
そう言うとレオは下唇を噛んで、今にも泣きそうな表情を見せる。あぁそんな顔させたかったんじゃないのになぁ。
「怪我のせいなのか?」
『それもあるかな』
けれど随分と前から私はもうすぐで自分が死ぬことを分かっていた。知っていた。だから今更何とも思わないのだ。
『だからさ、私が死ぬときまで一緒にいてくれないかな?』
自分でも我儘な願いだと分かっている。知っている。だけど、君とはこの身が朽ち果てるまで一緒にいたいと思ったから震えた声でそう言った。
『だめ、かな?』
「っ、おれも一緒にいたい!」
私はそんなレオの返事に安心して『ありがとう!』と笑ったのだった。
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作者名:ぽぽ | 作成日時:2021年1月30日 12時