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「蛍!」
いつものように月島の所へ弁当箱を持って行くと､
月島が分かっていたかのように廊下で待っていた｡
「あれ?待ってるの珍しいね」
「別にいいでしょ」
気恥ずかしそうに言う姿に私は小さく笑った｡
「なに｡」
「なんでもない!蛍のことが好きなだけ」
「そんなことよく人の前で言えるね」
いつも通りに冷たい言葉を言われるが､なぜか今日は冷たく感じなかった｡
私はそれを気づくのに時間は掛からなかった｡
嬉しくなって自然に笑みがこぼれた｡
「えへへ｡私の蛍への想いは人一倍だから!」
あまり前のように言うと､後ろから聞き覚えのある声が微かに聞こえた｡
「月島くんー!」
「おはよー」
その声の持ち主は､あの日教室で耳にしたことのある女子の声にそっくりだった｡
私とは真逆のきらびやかな女子達をポカンと見ていると､いつの間にか月島と私の間に立っていた｡
(あっ……)
「ねぇ､今日月島くんさぁ＿＿」
まるで私がいないかのように話が進んでいく｡
その空気に私は潰されてしまうような気分になり､月島にバレないように踵を返した時｡
「……ねぇ､その子を無視してまで僕に用が?」
いつもよりも冷たい声と､少しの怒りを含んだ静けさに私はびっくりして､月島に向けていたはずの背中は逆を向いていた｡
女子二人は思ってもいない反応に気が動転していた｡
「あはは……そんなわけ､ね?」
「う､うん」
「じゃあ､今､その子と話していたのに割り込む必要ないよね?
ちなみに､僕は君たちと遊んでる暇ないから｡」
あまりにも､ツンとした台詞に女子達は不満そうに､その場からいなくなった｡
「勝手に帰ろうとしないでよね」
女子達がいなくなった空間を月島から詰める｡
「そんな､こと!」
「他の女子が入ってきたって､君なら平気な顔で何か言うと思ったんだけど｡」
「……私はあの子達と違って､堂々と割り込める勇気､ないよ｡
蛍はああいう可愛い子の方が彼女に向いてるのかな……」
「は?」
「うっ!?」
眉間にシワを寄せ､月島が私を見る｡
「君が言う"可愛い"の定義だけで決めつけるところ､まだ変わらないんだね」
「だ､だってあの二人､凄く可愛かったじゃん!!
あんな神を見たら､私なんか……」
頭の上から爪の先まで行き届いた美意識の持ち主の二人が目の前に来てしまっては勝ち目がないと思うのは無理はなかった
「君は…」
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作者名：ユーナ | 作者ホームページ：yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時：2016年5月10日 1時
