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彼女が指す方角へ足を向けると、そこには周りよりも倍のキャンバスに描かれている作品。
名前を見れば彼女の物だった。
「これ、君が描いたの?」
「珍しい!月島くんが疑問形!!」
「いいから答えて」
「う、…私です。少し大変だったけど、月島くんのおかげで完成したんだ、だから見せたくて。」
彼女の瞳が嬉しさを伝えるように潤う。
もう一度、倍のキャンバスを見る。
(見た人は、こんな、
少し皮肉を絡めて思う。
でも、少しずつ、少しずつギャラリーが集まるのはきっと引き込まれる画だから。
「月島くん、ありがとう!」
眩しい笑顔で彼女はそう言う。
笑顔で言われる程のことをしたのだろうか、と不思議だった。
「僕、何かした」
「この、体育館のイメージは月島くんのおかげなんだよ。描きたいものが解らなくて、止まってたけど月島くんを思い出して"私の好きな場所"を描きたくなったんだ。」
「それって"僕"は関係ない」
「月島くんが輝いてる場所は、私の好きな場所なの!
それは、月島くんが好きなのと同じ!」
(自慢気にいうけどそれは"イコール"だろうか)
イマイチ結びつかない僕と彼女。
本当に彼女は僕のことが"好き"なんだろう。
でも、色んなことで結びつかない僕の何がいいのだろう。
(まぁ、今は勝負だし関係ないけど。)
「見せたかったのはこれだけ?」
「うん。そうだよ…っていうか何か感想ないの!?」
「は?」
「作品見て、感想ないのかなぁ……って。」
少し俯きながら彼女は言う。
「言う必要無いでしょ」
「……それは、褒めてるって意味で取っていいの?」
「ご自由に。」
先に足を進めれば彼女は合わせるように追いかけてくる。
「待って!」
「待たない。」
「即答ですか!?」
彼女の反応をよそに、足を止めずにそのまま歩き続けると、カックンと腕を引かれる。
「本当に待って!まだ行く所あるから……」
「何処に」
「私に付いて来て」
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作者名:ユーナ | 作者ホームページ:yuna187.tobio912-8h1i9q@docomo.ne.jp
作成日時:2016年5月10日 1時