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パシッ。
乾いた音がして、太宰治は目を見開く。
何故、乾いた音なんて物がしたのだろう。
答えは簡単。
Aが自身の椅子の上に膝で立って、目の前に居る太宰の口を手で押さえた為だ。
こんな行動をするに至るまでにAは焦っていた。自分の正体を全文字言われてしまえば、お終いだと、何故かそう直感的に感じた。
「……小泉、苦しい」
「……」
何を言っているんだ。
そこまで力は込めてないので気休め程度の物だ。と言うかそれ以前に身長差がそこそこあるので口元まで手を伸ばすのが大変なので本当に手が触れるか触れないか。
しかしそれでも距離が距離なのでふっ、と太宰の吐息がAの手にかかった。それは少しくすぐったい。
しかしその事を打ち消すかのように漠然とした不安だけがAを襲う。
もう一人の自分に呼ばれそうで恐ろしい。”貴方は小泉A””名嘉野雪は要らない_”
「……言わないで。」
Aは無意識に呟いていた。
バラされたらどうなるのだろう。また勝手に嫉妬されるのだろうか。……嫌だ。そうさ。自分はもう間違えないと決めたのだ。
「…じゃぁ小泉。君は女性なんだね?」
「………ええそうです。お願いしますもうほじくり返さないで。」
すんなりと認める自分が現れたことに驚く。こんな日が来るなんて、ましてや太宰に見破られるなんて思いもしなかった。
「……年は?」
「こいつ気色悪……」
聡司が呟いた。
AはAでは?と一瞬思う。
意味が分からなくて太宰の方を見ると悪魔のような笑みを浮かべていた。
__こいつ、弱みを握っているんだ……。
女性に年は聞くものではないけど今回は事情があるからね。
そんなことを呟きながら一周回って清々しい程の黒い笑みを浮かべた上司がAの目の前に居た。
Aは思い知る。
ここは金を稼ぐための戦場。
私は兵士で__。この上司は悪魔だ。
「……21です、」
「……!嘘!年下??てっきり与謝野女医位かと」
いや、知らんがな。与謝野女医と私に謝れ。
Aは前髪の中で悪態をつく。
太宰という上司に恐怖すら湧いてきたA。
何故、私の情報をそこまで?
一度冷静になったとき右手が上を向いていることに気付いたA。ゆっくりと、肘の辺りから目線で右手を追っていく。
Aは気付いていなかったが、読者の皆様は知っていることだろう。
そう。彼女の右腕は、太宰の口を押さえている。
「あ」
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幸日和(プロフ) - こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました! (2023年3月13日 22時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
綾部伊沙(プロフ) - 幸日和さん» 遅れてすみません ……!? 矢張り何回見ても凄いですね…!ユカちゃんまで下さるなんて…!(可愛い) 間の美人………そんな解釈もあったとは……そこまで考えてなかった笑 更新させていただきますね! 本当にありがとうございました! (2023年3月10日 18時) (レス) id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - 私的に夢主様は与謝野先生よりのナオミちゃんと与謝野先生の間の美人(?)という認識があるので,与謝野さんの公式のたち絵画像から模写した風になっているところもありますがご了承下さい。。 (2023年3月9日 0時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - こちらがURLです。 (2023年3月8日 23時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - http://uranai.nosv.org/img/user/data/1/a/2/1a2e1a3dac63fbae72c9e7b8c0b55331.jpg (2023年3月8日 23時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾部伊沙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e8e9c819a37/
作成日時:2022年11月9日 22時