今日も社畜は探偵社で嗤う

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「じゃぁ僕はこれで。もうこの会社で働く気なんて更々ないので採用しないでくださいね」

石神航也が玄関前でAに話しかける。その後、クリーニング代あざーすと呟きながらドアに手をかけ、探偵社を後にするのをAはぼんやりと眺めていた。

あの後、望月は泣きじゃくり、結局クリーニング代は会社の経費で落とされる事となった。
その言葉に会社の歯車であるAが青筋を立てたのは言うまでもないだろう。

「変わった奴だったね」
「………嗚呼」

あいつは言った。
大人の世界だから故意も過失も駄目だと。同じ考えの奴が会社に勤める事を拒否したのが非常に勿体なく感じる。

……根暗のヤベぇ奴だと思ってたけど、そうでもなかったなぁ。
そんなことをAは思い、探偵社のデスクに戻る。

望月がまだ泣いているので採用会議も開かれない。一人の人間のせいで探偵社が機能していない。

Aは溜息をつき無言でノートパソコンを立ち上げる。Aも面接官を押し付けられヒマでは無い。何なら猫の手も借りたい程に忙しい。
忙しすぎるときは吐血をするので注意が必要だ。洒落にならないよ、本当に。

「うわぁぁぁん………」
「愛里咲さん、泣いたらお顔が台無しですよ」
「愛里咲、これやるよ」
「………………ハンカチ」

社員に囲まれて泣き続け、一体どの位の時間が経ったのだろう？仕事は時と共に貯まっていくのに。ノートパソコンがカチカチと音を立てるデスクはAの物だけだった。

ただ、壁と無人の事務員の机に挟まれたその一角だけ。そこだけが歯車を動かしている。会社が回っている。

「……ありがとう皆」
「「「「「(天使だ！！)」」」」」

笑う望月に一斉に思う各々。本当に、この茶番には付き合っていられない。

例え、自分以外が望月の机に集まっていたとしても。

「小泉さーん♡」

望月が、話しかけてきたとしても。

「これ、手伝ってください♡」

押し付けられたとしても。

「あ、じゃぁワタシのも頼んだわ」
「私のも締め切り近くて…」
「…………」

普通に頼まれたとしても。申し訳なさそうを装われても。無言で書類を置かれ、紙が散乱したとしても。

「嗚呼そうだ。さっきの面接の会議を……」
「小泉さん、この報告書を……」
「小泉さんオナシャス！じゃ、僕帰りまーすお疲れ様っす！」

仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事仕事………………………

ワタシハ、オトナ

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