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石神の服には、コーヒーで茶色く染みを作られていた。
それを見て、早く謝れ望月と思いながら望月の方に目を向けるAだが、勿論望月は謝らない。
「すみません、うちの同僚が。」
Aは大人だ。大人だから、こんなこともしなくちゃならない。苦みばかりが続いても不平不満を漏らしてはならない。
頭を下げる。本当はもっとしなければならないのかも知れない。その事はAにも重々承知の上だったが、怒りと焦りで何も思いつかない自分に腹が立つ。
「いや、謝るの貴方じゃないでしょ。」
え、という呟きが聡司と重なった。
今までは望月のせいで怒った相手に八つ当たりされていた。これは仕方ないと踏んでいた。
私は大人だから。
「僕、コーヒーぶっかけられたの貴方じゃなくてそちらの人何ですよ。」
すっ、と指で望月を指し示す石神。望月はまだ目を潤ませて太宰は声をかけている。
「ふぇ……?」
望月はようやく石神航也の方に視線を向けた。潤ませた目を上目づかいに見上げる。
しかし、石神航也はそれには目もくれず話を続けていった。
ぽちゃっ、とコーヒーが滴り落ちて床に茶色い染みを作ったのをAは眺める。
「僕はこんなクレイジーな職場で働く気なんて更々ないので言いますね。
貴方、人のスーツコーヒーまみれにした癖に他人に謝らせて恥ずかしくないんですか?」
空気再び凍り付いたようにAは感じた。
緊張からか、怒りからか、それとも興味の視線からか__。
「わ、わざとじゃないもん」
「故意だろうが過失だろうが関係ないです。法律上どっちもアウト。クリーニングに出して下さいよこれ。」
詰め寄る石神。その淀んだ片目からは怒りしか感じられない。気迫に押されて、誰一人としてその場から動くことが出来なかった。
「だってっ………」
「僕らの世界じゃそれは駄目ですよ。」
何故なら。
石神は唇を動かした。
Aは、心拍数が上がっていくように感じた。
自分と同じような考えの人に出会えると思っても居なかった。
「__大人だから。」
Aは素の微笑みを浮かべる。
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幸日和(プロフ) - こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました! (2023年3月13日 22時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
綾部伊沙(プロフ) - 幸日和さん» 遅れてすみません ……!? 矢張り何回見ても凄いですね…!ユカちゃんまで下さるなんて…!(可愛い) 間の美人………そんな解釈もあったとは……そこまで考えてなかった笑 更新させていただきますね! 本当にありがとうございました! (2023年3月10日 18時) (レス) id: b1825981c0 (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - 私的に夢主様は与謝野先生よりのナオミちゃんと与謝野先生の間の美人(?)という認識があるので,与謝野さんの公式のたち絵画像から模写した風になっているところもありますがご了承下さい。。 (2023年3月9日 0時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - こちらがURLです。 (2023年3月8日 23時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
幸日和(プロフ) - http://uranai.nosv.org/img/user/data/1/a/2/1a2e1a3dac63fbae72c9e7b8c0b55331.jpg (2023年3月8日 23時) (レス) id: 83457a8bdf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綾部伊沙 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/e8e9c819a37/
作成日時:2022年11月9日 22時