今日も社畜は探偵社で嗤う

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「誰が良いと思う？僕は誰でもいーけど。じゃ、太宰から」

採用会議。
先程の書類の件で胃が痛い。頭が痛い。耳鳴りがする。
江戸川さんの声を聞くだけで大して高い音でもないのに耳がキンキン鳴る。

いつもは心地よく感じる折り紙が擦れ合う音でさえ、今は聞きたくない。
全て、不快。

頭痛に顔を歪める間にも、話し合いは進む。
こいつはこうだ。あいつはあーだ。
人を評価する議論。昔を思い出して疲れた体に追い打ちをかけるように胃痛が激しくなる。

不意に、小泉は？、と振られる。
喉の圧迫感に近い痛みに喉を押さえながら私は＿＿と、呟く。

”僕らの世界(大人の世界)じゃぁこれはだめだ”
”大人だから”
”＿採用しないで下さいね。”

意見を出すくらいは良いだろうか？
Aは書類を出しながら言う。

「………石神航也さん」








夜。
寝る時間。又は、町(・)が動き出す時間。

＿＿そして、社畜達による終わりなき宴(残業)時間。

「ガハッ、ゴホッ、」
「………」

室内でタバコを吸いむせるAの背中をさする聡司。その咳の中に赤黒い液体が混ざっている事なんてとっくの昔に気付いていた。

今日最初に吐いたのが11時位。
次が11.30。その次が12時。30分おきに吐くだ何て流石にやばい。
＿早く帰らなきゃ。

「死ねるわこれ…………。あはは…………………………クソがあんの野郎首切れろ！クソ事務員と望月！地獄にお」

自虐気味に呟き、その後狂ったように勢いを増しながらキーボードを壊れんばかりに打つA。

時計の針は午前1時を指し示し、散乱する書類と全ての部屋につく電気、特にコピーするものもないのに電源を着けているコピー機、空調を最強にした暖房。

カツカツと足で奇妙なリズムをとりながら折り鶴を蹴飛ばす。

聡司は相当いってんな、と思いながら自分が所属していた反社会的組織を思い出す。
うん。こんなにブラックじゃなかった。

”地獄に落ちろ”までを言おうとしたAの声。テレビの電源を突然切ったようにブツリと止まる。
カタ、とキーボードを叩く音も止まった。

「え？」

ドン！
椅子ごと、小泉Aは倒れていった。

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