【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ49)

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恋慕 ‐ ymoi,fw ページ49

一目惚れだった。

憧れていた学校の文化祭。一般開放はない後夜祭のステージで、軽音楽部唯一の男子の先輩がボーカルの先輩とアイコンタクトをして笑っている

その弾けるような笑顔が頭から離れない

.

「はぁ〜」

「Aため息めずらしいなどしたん」

同じクラスで幼馴染の湊に話を聞いてもらうべくわざとらしい溜息をつく

昨日の文化祭のキラキラは嘘かのような文化祭の片付け作業の合間に悪く言えばサボって教室の端で話をしていた

「軽音楽部の3年の男子の先輩名前わかる？」

「…………夢追翔？」

「夢追先輩って言うん」

「なんで？」

「昨日かっこよかったから」

「まさか惚れた？」

夢追翔。初めて聞く名前ではなかった。

クラスの女の子が話をしていたところを何回も聞いたことがあるし、軽音の友達がかっこいいんだよ〜って言ってたのも知ってる

学校の人気者なんて好きにならないと思ってたのに、柄になく一目惚れをしてしまった

否定するべきなのに否定できない

否定してしまったらこの恋を諦めないといけなくなると思って

「Aもついに恋しちゃ」

「うるさいなぁ」

顔赤いよって指摘されなくても分かってる

「よっしゃ、そうと決まれば本人に会いに行くまでよ」

「は？無理無理無理無理」

何を言ってるんだこいつは

一方的な片思いでいいんだ。先輩には彼女いるらしいし。そういう噂あるし

会っちゃったら彼女になりたいって思っちゃうから。認知されたらもっとって求めちゃうから

「ゆめおさん知り合いやから余裕やて」

「私が無理なんだって！」

「先輩3年よ？今10月よ？あと5ヶ月もないんよ？」

そんな、湊みたいにグイグイ行けるタイプじゃないし

推しだと思えばいいわけであってまだ好きかどうかは分からないし

「なに考えてるか知らんけど行くよ」

クラスの緩い雰囲気を利用してグイッと腕を引かれて教室を出る

それを咎める人は誰もいなかった

「ほら、そこおるよ」

確かに湊が指さした先には夢追先輩がいて、でも先輩は他の先輩と楽しそうに笑っていた

私が好きになったその表情で

いや、3年の教室に1年が入るのどう考えてもおかしいでしょう。一応今は授業中ですしね？休み時間と化してますけども

午前中のうちに片付けてしまえばそれでいいからあと2時間で片付けられるなら今遊んでても大丈夫なわけで、それを考えるのはうちのクラスだけじゃないらしい

「あれ？ふわっちじゃん」

「おっ、ゆめおさん」