【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ47)

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当日 ‐ ngo ページ47

どこまでも青い空が広がり、向日葵が元気良く顔を上げている

夏休みも始まって沢山の人で賑わっている海浜

それを横目に電車で辿り着いたのは賑やかという言葉とは無縁な閑静な住宅街

例年なら庭先や公園などで遊んでいる小さい子や部活帰りの中学生の声があるはずなのに、気象異常による暑すぎる夏はみんな涼しい家に籠り出てこない

高三の夏は休みなんて殆どはなくて、今日も学校で課外を受けてきた

その後息抜きだとか言い訳をつけてカラオケに行ってその帰り。サプライズで誕生日ケーキを貰って友達っていいなって改めて思った。

最寄り駅から自宅まではなかなか距離がある。まだ沈まないだろう太陽を背に自分の影を踏むようにして歩く。

毎年夏休みだから当日に祝ってもらったことがなかった誕生日。今年できた新しい友達が企画してくれた今日。

当日といのはやっぱり特別な感情が湧くもので、涙が溢れてしまいそうだった。でもその子たちに「長尾からは何貰ったの？」って聞かれて初めて彼氏に誕生日を教えていないことに気づいてその涙は引っ込んだんだけど。

「まさか何も貰ってないの！？」
「私が誕生日教えてないだけ」
目を伏せていたせいで景くんがやばい人みたいになっちゃったから慌てて答を出した。

彼と恋人関係になったのは去年の冬、クリスマス。らしくないと思うかもしれないけど本当のこと。

6日前に迎えた彼の誕生日にはネックレスをあげた。そのプレゼントの意味なんて分かっていないんだろうけど。

「景くんの友達も今日誕生日だからさ、仕方ないよ」
そういう問題じゃないと思うと言われてもじゃあどういう問題なんだ？って。電話かけてやるって言う友達を抑えて帰ってきた

煮え切らないようだったけど本当になんとも思っていないんだもの

そういえば藤士郎くんにおめでとうって言ってないかも

藤士郎くんは景くんのお友達で一つ下の後輩。初めて会った時に美容のお話で意気投合してから仲良くさせてもらっている

外で申し訳ないけど、電話かけてみようかな

「あ、藤士郎くん？誕生日おめでとう！」

ワンコールで出た彼。早くない？

『わぁ〜ありがとうございますわざわざ！』

後ろで景くんと晴くんの声が聞こえる。ゲームかなにかしてるのかな

「プレゼント後で渡すね！新作コスメ！」

『まじ？僕もAさんのプレゼント用意してますよ。今度会えた時に。あ、景くん借りちゃってごめんなさい。この後は2人で過ごすんですよね？』

「ん？そっちもう解散するの？」

『僕夕方から用事があるのでそろそろ解散になるかと』