【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ42)

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忘却故の ‐ ymoi※ ページ42

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小洒落たカフェに同僚2人と共にランチに入る

トーストからナポリタンやら各々好きなものを頼み、混雑している店内を見て暫く待つ必要があるなって思った

久しぶりな3人でのランチタイム二上がる話題と言えば決まっている

人が行き交う外の世界を眺めながら2人の女子の会話を聞いていた

「それでAはどうなの？」

「んえ？」

「また話し聞いてなかったでしょ」

「ごめんごめん。気になる人…？」

「聞こえてるんじゃん」

やっぱりその話題か

いつになってもJKのようなノリで恋バナをしている

毎回この話になる度にいい感じに流していたけど今はそれが出来ない

だって実際に気になる人はいるから

「待って、それはいる反応じゃん？誰？」

「………………夢追さん」

「え」

聞かれたから答えたのになんだその反応は

もっとキャッキャするところじゃないの？

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして2人とも黙り込んでしまった

さっきまでわちゃわちゃしていたのに急に静かになったからか、それともこの微妙な空気に何かを感じたのか、料理を運んできてくれた男性の店員さんが気まずそうにそれを並べる

ごゆっくりどうぞと言いそそくさと帰って行ったあの人は何を思ったんだろう

何も分からない私に教えてほしい

「記憶、戻ってないんだよね」

「うん。多分」

「あんまり言わない方がいいんだろうけど、Aが忘れてるの恋人の事だよ」

「恋人？いたの私」

記憶が部分的になくなってしまっているらしい私の脳は何が欠けているのかすら分からない

「ねえもしかして夢追さんなの？」

湯気が立たなくなったパスタが目に入る

鈍感系主人公のように察しが悪いなんてことは無い

これは聞くべきじゃなかった

2人の沈黙こそが答えなのだろう

かと言ってもちろん彼のことを思い出すわけではなかった

「これ私一生叶わない恋してる？」