【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ35)

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「あれ？ういはじゃん」

「あ、黛さん」

「その子は、例の？」

「そう！可愛いでしょ〜？」

何となく見たことがあるような気がする男の子が彼女の名前を呼んだ

"黛さん"ういはちゃんから日本に数人しかいない苗字の人がうちの学校にいるとかなんとか聞いたことがある

黛さんは普通に私服だった

可愛いでしょと言われたと同時に背中を押され1歩前に足が出る

きっと彼は私じゃなくてういはちゃんに興味があるんじゃないかと思うけど

「うん。可愛いね」

「でしょ〜ところで1人？」

無表情な顔からは想像できないうなセリフが聞こえたような…？

しかも棒読みじゃなくてちゃんと気持ちが籠っていたような気がする

「まさか。たこ焼き探しに走り回ってるよ」

ほらと目線をやった先ではカラフルな髪色の2人が笑いあっていた

あの人たちも同じ高校なのかな

それじゃ楽しんでと言い残して彼らの方へ言ってしまった

「私達もそろそろなにかする？」

「あ、林檎飴は買えそうじゃない？」

チョコバナナや林檎飴、ねり飴などが置かれている

私はチョコバナナ、ういはちゃんは大きい林檎飴を買う

林檎飴に比べて直ぐに食べ終わってしまうチョコバナナ

少しの段差に腰掛けて小さな口を開けて齧り付いている所を見て、既に食べ終えてしまったチョコバナナの棒をクルクルと回して遊ぶ

ひとくち食べる？と聞いてくれたけど、チョコがそれに着いてしまったら良くないなと断った

そっかとニコッと笑ってまた林檎飴わ口に運ぶういはちゃん

時々とても寂しそうに笑う彼女の本音を知りたい

そんなことを思ってしまうのは彼女に迷惑かな

空も暗くなり始めて、紫陽花よりも女の子たちの浴衣の帯の色が目立ち始めた頃花火配布のアナウンスがあった

たこ焼きや焼きそばなど美味しそうなものをとりあえず買って食べていた私達も、貰いに行ってみようかと立ち上がる

本部に着いた頃にはもう数本しか残っておらず、線香花火だけをそれぞれ一本ずつ貰って来た

線香花火はもう少し夜が更けてから

田舎の小さいお祭りだから、射的とかくじ引きとか景品があるような屋台はない

あるとしたらヨーヨー釣りくらい

神社の敷地内の端の方に移動して小さい子たちが花火に火をつけ楽しんでいるところを見る

決められた場所に蝋燭があり、そこで火をつけられるようだ

「私達も、ああやってはしゃいでたのかなぁ」