【短編集】少しの幸せを貴方に【2j3j】 (ページ28)

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入学式も無事に終わり初めてのHR、自己紹介はまた明日にしようと言うことになって担任と副担任の先生の自己紹介を聞いてその日のHRは終わった

ガヤガヤと教室を出ていく生徒に紛れて4つ前の席に座る葛葉に声をかける

「友達できた〜？」

「できるわけ」

仲良くなった人にはだる絡みしてウザったいくらいなのに知らない人の中に放り込むと縮こまって全く話そうとしない

それは私もそうなんだけど

「きっとすぐクラスの中心になるんだろうね。葛葉は」

顔を伏せたままの彼に励ましの言葉をかけながら後ろを振り返るように前の席に座る

「そういうAはどうなんだよ」

「私もぼっちだよ」

自嘲するように声を発するとやっと顔を上げる葛葉

教室には私たち以外誰もいなかった

でも、私たちのクラスがちょっと早くHRが終わっただけで他のクラスはまだHRの最中だ

だから声は聞こえるし窓からは柔らかく太陽の光が注いでいる

「葛葉？確認だけど、好きな人出来たら教えてね」

「またそれか。分かってるって」

葛葉が私が1番女子の中で仲が良いと思ってくれていると自負している

確信的なものはなくて何となくではあるけれど

だって彼が5年想いを寄せていた女の子のことを諦めたことを知ったのは彼が私に教えてくれたから

まだ誰にも言ってないんだけどと話し始めた時のことをよく覚えている

その時に約束したこと

"好きな人出来たら教えるから協力してほしい"

いや、それは嘘で、正しくは私が好きな人教えてくれたら協力するからねと一方的に話しただけなのだ

それを葛葉は守ってくれていて、ちゃんと伝えようとしてくれてる

"お前も、彼氏できたら教えろよ"

好きな人ではなく彼氏が出来たら。その言葉に意味はあったのだろうか。

今考えてもどうにもならないことは分かっているけど、どうしても考えてしまう

「じゃあ、お互い友達作り頑張ろうね」

そう言って迎えに来てくれた幼馴染の元へと駆け寄った

葛葉がその後どうしたのかは分からない

この話をした数日後、彼からLINEで『お前まだ友達いねーのな』と来た時は殺してやろうかと思ったけど