【WT】硝子の靴は捨てた (ページ28)

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そうだ、ピアスを付けようページ28

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そうだ、ピアスを付けよう。
京都へ行こうみたいな軽いノリだが、人間の行動力なんて思い立ったらすぐに動くものだ。蓮月は学校終わりにドラッグストアでピアッサーを購入する。今日は任務もないし、モデルの仕事もない。時間はたっぷりある。耳を開けようと蓮月はネットの記事で開け方を調べてやってみるが。

「……ムズい」
　

初めてのピアスでもあるから綺麗な場所に開けたい。両耳が同じ位置になるようにマーキングペンで印を付けてみるも同じ位置なのか分からなくなってきた。一度誰かに見てもらった方が良いかもしれない。そう思い、蓮月はピアッサーを片手に部屋から出た。

「ピアス開けるんだけど、ここって同じ位置？」

リビングルームに行くと料理をしている木崎とババ抜きをしている迅と小南がいた。蓮月のピアス開ける発言に「A開けるの！？」って小南が声を上げるもんだから木崎が「小南、うるさいぞ」と叱る。

「痛いわよ。絶対痛いわ。A、開けるの止めときなさい」
「身体に穴開ける時点で痛いの分かるでしょ。レイジさんどお？両耳同じ位置になってる？」

蓮月は木崎の元へ寄る。木崎は火を止めて蓮月の両耳を見た。

「同じ位置だな」
「ならいいや。開けよーっと」
「毎日ちゃんとケアは忘れるなよ」
「はーい」

確認してもらってから蓮月は小南の隣に座る。「桐絵、開けて」「ムリムリムリ！」と即答で断られた。

「じゃあ迅くん」
「おれも開けたことないんだけどなぁ」
「大丈夫。スコーピオンで刺すのと同じ」
「ンな無茶苦茶な」

苦笑を浮かべながらも迅は蓮月を隣に座るよう呼ぶ。蓮月は迅にピアッサーを渡して身体を横に向けた。迅は片手にピアッサーを持ってから蓮月の耳朶に触れる。

飾り気もない耳朶に自分の手で穴を開けるのか、と考えながらピアッサーを耳朶に挟む。「開けるよ」と伝えて、バチン！と音が響いた。

「ヒィ！」

開けた本人じゃなくて小南の悲鳴が上がる。そんな小南を無視し、迅は同様にもう一方の耳朶の穴を開けた。

「……うん。いい感じ。ありがと迅くん」
「どーいたしまして」

きらりと蓮月の耳朶に二つの青い石が輝いている。今、この手でAの身体に穴を開けた。謎の優越感があるなぁ。

迅は蓮月の耳に髪をかけてから、するりと蓮月の頬に触れると猫のように蓮月は迅の手に擦り寄る。

「また開けてね」

悪魔の囁きだ。
微笑う蓮月に迅は参ったと肩を下げる事しか出来なかった。