やさぐれ姉さん。3【SVT】 (ページ9)

今日:2 hit、昨日:14 hit、合計:156,346 hit

届かない（MH）ページ9

MHside

ウジヒョンが少し興奮気味に、とある広告を見せてきた。

そこに映っていたのは僕らが探していた人

「セギ、さん…。」

「そうだ。アイツは日本で演技をしてるんだ。」

どこか自分のことのように嬉しそうに話すウジヒョン。

それもそうだ。

あの日以来、セギさんの事を知りたいと願い探していたのは僕だけじゃない。

今まさに目の前で嬉しそうにしているウジヒョンだってそのうちの一人だ。

「良かった、本当に。」

「あぁ。顔色を見る限り元気そうだしな。」

本当に良かったと言い合う僕ら。

まだ芸能界に従事していた事に喜びを感じると、更に欲が出てきてしまうのが人間の性。

もしかしたら、なんて有り得もしないことを願ってしまうを

「…もし、だよ、ウジヒョン。」

「ん？どうした？」

「セギさんが芸能界に居るっていうことは、僕らがもっと頑張って有名になれば、今度はステージ上でセギさんと会えるのかな？」

ステージ上じゃなくても、スタジオが被ったら楽屋挨拶とかでさ…と続けて、ウジヒョンにどう思う？と問う。

それを聞いたウジヒョンも、有り得なくはないだろうけどかなり厳しい確率だぞ？と笑いながら言う。

そんなもの僕だってわかっているけれど、少しでもセギさんに会える可能性があるのなら

僕は会いたい。

会って伝えたい。

あの時はごめんねって謝って、また一緒にカフェにでも行きたい。

そんな風に願えど画面の中にいるセギさんは日本の女優。

僕らは韓国のアイドル。

立場が違いすぎる上、まず仕事も被らないだろう。

そんなふうに頭を悩ませているときだった。

自動再生がオンになっていたのか、別動画が流れ出す。

その際に現れた広告はまた日本のもので、そこに映っていたのは先程と違う役を演じているセギさんの姿だった。

でも流れてくるものは音楽だけで。

「…あ。」

その手があったか、とまるで名案が浮かんだかのように口角が上がる。

そうだよ、僕らはアイドル。

ファンに音楽で笑顔を伝える仕事。

その音楽にはストーリーがあるしそれを伝えるためのMVだ。

MVに彼女を採用すれば、僕らも会うことができるし共に仕事もできる。

名案じゃないか？と我ながらに思う。

しかし、この話が簡単に通るほどの案でも無いため十中八九却下されるだろう。

「…元気でやってるのかな…。」

思わず空に手を掲げた。

居ないのに、までそこにセギさんがいるかのように。

画面に映るセギさんにこの思いは、届かない。