やさぐれ姉さん。3【SVT】 (ページ8)

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会えるなら（WZ）ページ8

WZside

作業室に流れるメロディーライン。

それを聞きながら、これも違うこれも違うと修正を加えていく。

でも納得のいくものは完成しなくて。

嗚呼、今日のアイディアの神様は少し意地が悪いらしい。

「…飯……。」

そんな風に思っても、前までならコンビニに足を運んでいたのに。

そのお陰で作業が捗っていたのに。

今どこにいるんだよ、セギさん。

あんたの歌声が聞いてみたかった。

歌ってくれって素直に言っておけばよかった、そんな後悔をしても遅い。

結局、作業室のソファに倒れ込んでボーッと天井を眺める。

食欲も湧かなくなった。

「なんか別のことするか…。」

ケータイを取り出し、折角なので何かを音楽を流そうか、動画を見ようか、と少し悩み動画サイトを開く。

ふと、目に留まったのは日本の動画。

特に何の変哲もない動画投稿者の動画だ。

「…。」

何を思ったのか俺は、その動画をタップする。

長めの広告付きの動画で5秒後にスキップと表示される。

興味も無いし日本の広告だから言ってることはあまりわからないし。

この5秒長いなぁと若干イライラしながらやっとスキップできるとタップをした瞬間だった。

「えっ。」

本当にタップをした瞬間、見覚えのある人がチラと映った。

あまりの驚きに流れる本編もそっちのけ。

落ち着こうと思い起き上がっても動揺してたせいかケータイは手を滑らせて落とすし、心臓はバクバクとうるさい。

今の、だって、絶対そうだ。

「…セギ、さん…？」

見間違いだろと訴える自分と、あれはそうだと訴える自分が居て。

それでも、それでも今見た女性が本当に、セギさんだったら。

ほかの動画を再生して、その広告を探すがどこにも見当たらない。

さっきのはもしかして錯覚？妄想？

そんな考えすら頭の中に浮かび上がってくる。

その時だった。

『今更どうするつもり？』

「…間違いない、セギさんだっ…！」

やっと見つけたその広告。

見た限りドラマの広告らしいが、そこにセギさんは映っていた。

雰囲気から察するにその役は多分、あたり役だろう。

それでも主役を取って食いそうな演技力は健在で、ヒロインよりも人間味に溢れ輝いていた。

健康的な生活を送れているのか顔色も良く、窶れた雰囲気など微塵も感じさせない。

あの酷く濃かったクマも見当たらないくらいだ。

「…もう、会えねぇのかな。」

無意識に口から出たその言葉は

誰に届く訳でもなく、そっと作業室の空気に消えた。