【SVT】職業、天才。【男主】

天才、日常を撮る。 ページ16

「じゃあ今日はGeNocの日常を撮影しまーす。」

「言っちゃうあたり、日常もクソもねぇな。」


GeNocさん入りまーす！と通されたのはとあるマンションの一室。

モデルルームのように整理整頓されたその部屋はファンの言うGeNocの理想の部屋を元に作ったらしい。

いつの間にそんなアンケート取ったのか聞くと、1stシングルにアンケートを同封していたとの返答が。

そこで俺が好きに出かけたり、料理したり曲作ったりなどの一日を撮影するという。

初回限定盤の1stアルバム特典映像にするらしい。

需要あるかこれ…？と首を傾げながら俺はある一室の扉を開ける。


「ご要望通りの機材と、設備を君の自宅から運んだけれど設置は完璧かい？」

「うわっ！！びっくりした！」


後ろから話しかけてきた社長に肩を揺らしながら、部屋を見回す。

確かにそこには俺の自室と同じ空間が広がっていた。


「…この部屋だけは、自室と一緒がよかったんです。桐崎AからGeNocに、GeNocから俺に。その狭間で居られるのがこの部屋だけだから。」


部屋に置いてあるのは極々普通の、ギターや入力キーやパソコンなんか。

初めて買ったギターは中学一年の時に憧れだけで手にしたエレキギター。

俺の原点。

今はもう使っていないエレキギターだけれど、何故かそっとそのギターに触れる。


「確かに撮影だが、GeNocではなく桐崎Aという側面も撮る機会だ。リラックスしてあまり気負わず取り組むといいよ。」


肩をぽんと叩いて撮影陣の方へ歩いていった社長を見つめながら、GeNocさん玄関からの撮影いきまーす！と声をかけられる。

はーい！と返事をして玄関へ急ぎ、合図と共に扉を開いて出迎える。


「よく来たね。いらっしゃい。」


カメラマンさんに向かってそう笑いかけ、カットの声が掛かるまで微笑み続ける。

オープニング映像らしい。

その後部屋を紹介したり、映像のコンセプトを伝えたり料理を作ってみたり買い物に行ったり…本当に普通の日を過ごす。

そして終盤に風呂から上がり寝巻きに着替えた俺とカメラは一緒に例の制作部屋に入る。


「ここはGeNocさんの制作部屋ですね？」

「はい。今回の撮影をする際に俺のワガママでこの部屋だけは自宅と同じにしてもらいました。」

「では置いてある機材も？」

「全て私物です。ほら、シール跡があったり傷付いてたり…あ、ここ汚れてる。」


笑いながらその傷を指す俺はそのまま例のエレキに手を伸ばす。


「これが俺の原点です。」

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