Playing With Fire. １

"彼"の正体 3 ページ17

「本日付けで、社長の秘書を務めることになりました、一之瀬Aです。」



「聞いてるよ。」



「秘書をするのは初めてで、不慣れなこともあると思いますが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。」



「不慣れでは困る。俺の秘書である以上、全てを完璧にこなしてもらわないと。」





社長はよくドラマであるような、レザーの黒色の椅子に座っていて、社長の机の後ろにあるガラス張りの窓を向いていて顔が見えない。




だから声はわかっても表情がわからない。




「なるべく早く慣れるよう、努力します。」



「それは、いい心構えだな。一之瀬Aさん？」





社長が名前を呼んだと同時に、クルリと椅子が回って社長の顔を初めて見た。




「……！」



けどその顔は、初めて見た顔ではなくて……。



「あなたは……」



「社長の西島隆弘です。君を選んだのは、この俺だ。」




そう言った彼……社長の顔は、あの時のようにひどく楽しそうだった。





「…社長、だったんですね……」



隆「社長であることを隠して、君にあんな質問をしたことは許して欲しい。」



「社長として、あの質問をなさったのは、妥当だと思います…。」





自分の秘書を決めるんだから、やましいことがある人を、そばに置くわけにはいかない。




だから社長の行動は、正しいものだと思う。





隆「だが君としては、あまり答えたくはないことだろう？」



「できることなら…。」



隆「心配しなくてもいい。二度と、あの質問をすることはない。」



「はい…。」

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