バリトンさんとの日常 ページ18
硬い机の感触で目を覚ます。どうやら、また作業所で眠ってしまっていたらしい。……そして目の前には、不敵な笑みを浮かべる“彼”の姿があった。
｢おはようございます、Aさん｣
バリトンとは、かの有名なアドルフ・サックスが作ったサクソルン属の金管楽器。イギリス生まれの彼は、綺麗な外見とは裏腹にえげつない皮肉をかましてくる。
｢……ふふ、今日も一段と素敵ですね。見ていると心が和みます｣
｢……おはよう、バリトン。
こんな朝から珍しいね……今日何かあったっけ？｣
｢……あぁいえ、まだできていないならいいんです。
急かすつもりは決してないんですけど｣
……必死に頭の片隅にある記憶を呼び起こしてみる。
そういえば、鍵が壊れてるから新しいケースを探してくれって言ってたんだっけ……
｢ごめん、ケースの鍵だっけ。忙しくて忘れてた……
うーん……今日はそんなに忙しくないし、叔父さんの店にでも行ってみようかな｣
｢……お手を煩わせてしまって申し訳ありません。お早いお帰りをお待ちしていますね｣
｢え？ 何言ってんの、バリトンも来るんだよ｣
｢……は？｣
｢はぁ……なぜ私まで行く必要が？｣
｢そのケース結構古いから、ケースごと新調しようかなと思って。……
……行きたくない、とはっきり顔に出ている。
半ば無理やり引っ張るようにしながら、楽器職人の叔父の元を訪ねた。
｢おお、A！ 久しぶりだなぁ。元気してたか？｣
｢うん。……叔父さんも元気そうでよかった。今日は、バリトンのケースを新調してもらいたいんだけど……｣
｢その手に持ってるやつか？
……へぇ、中々のビンテージもんだなぁ。楽器はまだまだ使えるが、ケースの方はだいぶガタがきてやがる｣
……ケースを開けるや否や、叔父さんはえらく感心したように感嘆の声を上げた。
｢とりあえず、新しいケースは今から作るとして……
ちょっと待ってな、確かあの棚に……おぉっ、あったあった！ ほら、とりあえずこのケースに入れてきな｣
少しホコリを被っているものの、今までのケースと比べるとかなり良いケースだ。
｢ありがとう。……どう、バリトン？｣
｢……悪くないですね｣
｢……！ あはは、よかった｣
……『悪くない』。これが、天邪鬼な彼なりの最大級の褒め言葉なのは、言うまでもなく分かり切っていた。
オススメの楽器さん
バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (
レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました！！ いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです！！ (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜！！ 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……？？ (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします！！！ (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べるーが | 作成日時：2023年3月1日 23時
