トロンボーンさんとの日常 ページ11
｢天にまします我らの父よ……われらを試みに引き給わざれ、われらを悪より救い給え｣
｢……おはよう、トロンボーン｣
｢うわっ！？ なんや、Aか……びっくりしすぎて心臓止まるとこやったわ｣
｢ごめんね、声かけようか迷ったんだけど……お祈りの途中みたいだったから｣
｢ええよ、むしろ気ぃつかわしてごめんな｣
彼はそう言って、いつもの明るい笑顔を私に向けた。
そんな姿からは想像もつかないが、彼は『神の楽器』と呼ばれ、長い間宗教曲以外での使用を控えられた神聖な楽器だった。
｢……お祈り、毎朝やってるんだね｣
｢はは、まぁ一応な。今はもう、誰に言われるとかでもないんやけど……習慣みたいなもんやから。
それより、わざわざ話しかけてくるっちゅうことは、なんか俺に用があったんとちゃうん？｣
｢うん。……これ、そこで拾ったんだけど……トロンボーンのだよね？｣
少し古びたロザリオを手渡すと、彼は驚いたように目を見開いてからそれを受け取った。
｢ほんまや、いつの間に落としたんやろ……拾ってくれて助かったわぁ。おおきに、A｣
｢いえいえ。大事にしてるんだね、そのロザリオ｣
｢……はは、まぁな。もう随分長いこと持っとるから、錆びてもうてるんやけどね｣
彼の言葉通り、そのロザリオは所々錆びついていて、歴史的価値すらありそうだ。
｢そうなんだ。……もしよかったら、なんだけど……｣
｢うっわ、めっちゃ落ちてるやん！
ポリッシュだけでこんな綺麗んなるもんなんやなぁ｣
｢うん。メタルポリッシュだから、あんまり使う機会はないんだけどね｣
｢えっ、いつも俺らに使っとるやつとちゃうん？｣
｢いつもトロンボーンに使ってるのは、大抵ラッカーポリッシュかな。
メタルポリッシュは本当に強力だからね……強いて言えばアンラッカーの楽器に使うくらい？｣
｢へぇ、知らんかったわ……Aってほんま、俺らより俺らに詳しいやんなぁ｣
｢あはは……ポリッシュは、昔間違えたことがあって。おじいちゃんにすごく怒られたから、そのせいかも｣
半ば呆れたように微笑む彼をよそに、今は亡き祖父を思い出していた。……いつも優しかったけど、楽器のこととなると厳しかったなぁ……
｢……よし、できた！｣
輝きを取り戻したロザリオを首に掛けてやると、彼は喜びを爆発させたような笑顔を私に向けた。
……この笑顔を見れただけで、仕事の疲れもどこかに吹き飛んでいくような気がした。
オススメの楽器さん
バスクラリネット
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もも - べるーがさん» なんか泣ける… (4月19日 0時) (
レス) @page44 id: 8826ef9895 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» すみませんお待たせしました！！ いつも以上に作者の趣味全開で書いてしまって本当に申し訳ないんですが、よければお納めください……🙇🏻♀️ (4月17日 1時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» そうです！！ (4月11日 0時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
べるーが(プロフ) - ももさん» リクエストありがとうございます〜！！ 一応確認したいんですけど、弦楽器のコントラバスで合ってますか……？？ (4月11日 0時) (レス) id: a87c674b3c (このIDを非表示/違反報告)
もも - べるーがさん» リクエストでコントラバでお願いします！！！ (4月9日 15時) (レス) id: 2bfbe6c963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べるーが | 作成日時：2023年3月1日 23時
