お嬢といっしょ【ars/K.N】 (ページ15)

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父「……わかった。この先どうするかは、お前と向こうの人たちの判断に委ねる。だからお前が決めたんなら、もう父さんたちは何も言わないけど、これだけは約束しろ」

「ん？」

父「どんな立場になろうとお前は俺たちの息子だから。怪我しても良いけど、絶対に死ぬなよ」

「……はい」

父「たまには帰ってきなさい。近いんだから。まさの組からは」

「ありがと」

父「表立っては応援は出来ないけど。受け入れたのは、まさの組だから、だからな？」

「分かってる」

父「なら良い。じゃあ……おやすみ」

「おやすみなさい」

スマホをタップして、電話を終了させた途端

足の力が抜けて、その場に蹲み込んだ。

緊張から解放されて、呼吸が少し乱れている。

スマホを握りしめた手が震えていた。

「これでお嬢と一緒にいられる……」

床に蹲って、安堵の大きなため息を漏らしていた。

お嬢は俺が組に入ると言ったら、怪訝な顔をするだろうか。

それとも少しは嬉しそうにしてくれるだろうか。

そして、想像もできない世界に足を踏み入れようとしているからか

気持ちが高揚というか、神経が荒ぶっているような気がしてきた。

俺の人生はこれからどうなるんだろう。

何事も適当に生きてきた俺が、極道の世界でやっていけるのか？

お嬢を守れるのか？

たくさんの不安はあるけど、お嬢のそばにいられることがなによりも嬉しい。

それは何があろうと揺るぎない感情だ。

数日後、お嬢のお屋敷にスーツを着て向かう。

若頭にはあらかじめ電話して、会ってもらえるようにアポを取った。

お屋敷の門を潜ると、補佐や若い衆が出迎えてくれた。

＊「和君、どうぞー。学校疲れたでしょぉ～」

「いえ。大丈夫です」

ここの人はいつ来ても話し方が穏やかで柔らかい。

＊「お嬢はまだ習い事から帰ってきてないから、いないけど大丈夫？」

「いない方が好都合です。反対されそうですから」

＊「確かに(笑)」

俺がこの組に入る覚悟があることは、周知の事実で

今のところ知らないのはお嬢だけだ。

客間に通されると、着物を来た親分と若頭、相談役が横に並んで座っていた。

親「和君、楽に座ってねぇ」

「はい……」

いつもはTシャツにズボンみたいなラフすぎる格好で

普通のおじいちゃんと、おじさん、おばさんって感じなのに

着物を着てビシッと決めてると、やっぱり極道の人たちなんだなと再確認した。