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『かずー』
「はい、何でしょうか、お嬢」
『なにしてるの？』
「勉強です」
『べんきょーしてどうするの？』
「良い学校に行くんですよ」
『なんで？』
「お嬢をお守りするためです」
『ふーん』
俺の父さんが、ここの人に世話になって15年。
だから俺は生まれた時から、時々ここに出入りしている。
昔はよく抗争をしていたらしいけど、今はそういうことをすることなく
基本的にはいろんな事業に手を出して、暮らしている。
けど、極道の世界をやめたわけじゃないから
たまに若い衆たちが、傷だらけで帰ってくることもあってビビる。
『いいがっこうにいかないと、まもれないの？』
「そうです。これからは体力や暴力ではなく、頭を使うのです」
『よくわかんない！』
『そのうちわかります。お嬢にもきっと』
俺の隣で、お絵描きをしている女の子。
ここの家の一人娘、Aさん。
5歳になったばかりで、おてんば盛り。
両親はもちろん、親分や、若い衆、全員から絶え間なく愛情をもらって、すくすく大きくなっている。
俺の両親も、お嬢を可愛がってるし
俺からしても妹のような、娘のような存在で、すごく可愛い。
この空間に、子どもが俺しかいないからか、よく懐いてくれて
俺が勉強してると必ず寄ってくる。
『きょうは、おうちにいつかえるのー？』
「6時には帰りますよ」
『ろくじってなんじ？』
「長い針が12、短い針が6のところが6時です」
『じゃあ、まだかえらないね！どーしてかずは、ここでべんきょーするの？』
「家の工場の音がうるさいからです。あとはお嬢に会いに来てます。まぁ、言うならお嬢のお守りですね」
『Aに？ふふ、かずやさしいねー』
「ありがとうございます」
俺の家は工場で、生計を立てている。
昔、金を借りただけで、今はもう金は返したし、極道の世界に入ったわけでもない。
けど、ここの人たちがいい人たちばかりだから
家が忙しい時期になると、共働きの両親の代わりに、ここで面倒見てもらったり、勉強することにしている。
ここの親分も、俺のことをありがたいことに、自分の孫みたいに可愛がってくれているからだ。
今年は受験だから、ここに来て勉強することが多くなった。
家だと誘惑がありすぎて集中出来ないから。
『かずー。みて！かずのかお！』
「お上手ですね」
『あげる！』
「ありがとうございます」
……邪魔されるけどね(笑)
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 10時
