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「A先生」
『二宮先生。何ですか？』
仕事場では夫婦別姓でやってるから、結婚して二宮になった自覚があまりない。
「病院行った？」
『言ったけど。何？』
上の階の先生に資料を返しに行く途中で、かずさんが小さな声で話しかけてきた。
「いや。大丈夫だったかなぁって」
『ん。大丈夫』
「良かった。今日一緒に帰れる？」
『うん。帰り一緒にスーパー行こ』
「いいよ。今日のご飯なに？」
『うーん。スーパー行って決める』
「了解。んじゃ、またあとでねー」
『お疲れ様です』
軽く会釈をし合って階段の前で分かれたから、後ろを振り返ると
嬉しそうに歩く二宮和也先生。
おじさん可愛すぎ(笑)
こういう何気ない日常が愛おしい。
変化なんていらない。
ただ、かずさんと一緒に1日でも長く
1秒でも長く寄り添っていたい。
けど、かずさんが子どもが好きなのを知っているから。
もうだいぶ大きくなってしまったあのクソ女が産んだ子どもでさえ
会う日が近づくと、馬鹿みたいに嬉しそうにする姿を、もう何年も見続けてきた。
かずさんは、あの全然似ていない子どもたちが可愛くて仕方ないんだ。
……自分の子じゃないとも知らずに。
面倒なことに、薬を飲んでないことがかずさんに速攻バレて
「大丈夫？今月ちゃんと生理来てる？」
暇なのか、私の体調含め、生理周期まで
管理し始めた。
『あとちょっとしたら来ると思う』
「そう？お腹痛くない？頭は？吐き気ある？仕事ちょっと減らしてもらったら？眠い？」
……過保護全開。
『いい』
「本当に？」
『ん。ねぇ。何で私の生理まで手帳に書くの？』
「だってさ、書いとかないと、めちゃくちゃに抱いていい日が分かんないじゃん」
『別に生理以外の日だったらめちゃくちゃに抱かれたいんだけど、いつでも』
「そうだけど、抱くぞ！って思った日に来ちゃう時あるじゃん」
『てかさ、かずさんいちいち聞くし、私もちゃんと言うんだからそれで良くない？旦那に生理まで覚えられてるの嫌なんだけど』
「分かってない！Aちゃんは、何にも分かってない！排卵日付近のAちゃんが出す色気の破壊力を分かってない！！俺はその期間に全力で抱きたいの！他の日も抱きたいけど、特にその期間が猛烈に男として興奮すんの！分かる？」
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年5月31日 9時
