ヒメユリコンペティション【ars/K.N&S.S】 (ページ41)

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うるんだ瞳が妖艶に俺を捕らえるから

A先生にしか聞こえない言葉を……

A先生にしか伝えたくない想いを……

A先生にしかわからないように真っ直ぐ見つめ返して……

そして、膝に置かれた綺麗な手を握りしめて……。

翔「I love you.
More and more every day.
(どんどん貴女を好きになっていく)
I’d love to spend time with you.
(もっと貴女と一緒の時間を過ごしたい)
You mean so much to me.
(僕にとって貴女は大切だから)
……Would you go steady with me with a view to marriage?
(結婚を前提に僕と付き合ってくれませんか)」

俺の言葉に目尻から涙が一筋、音もなく桃色の頬を伝って落ちた。

英語で言うつもりなんて全然なかったのに

とっさに英語にしたのは、英語の方が万が一突然誰かが部屋に入ってきても

話の内容が一瞬聞いただけじゃ分からないようにしたかったからだ。

何粒も流れる涙を拭う指が震えていて

そして、呼吸も震えながら漏らして、俺の目を真っ直ぐに見て言う。

『I’m glad to hear that ,but I can’t see you as my boyfriend.
(ご好意はとても嬉しいですが、貴方を彼氏として見れません)
……ごめんなさい。きっとどれだけ時間が経っても。櫻井先生はとても素敵で、爽やかで、キラキラしていて。私なんかよりいい人いっぱいいますよ？』

首を少し傾げて、俺に合わせてくれた流暢な英語のあと

諭すように柔らかな優しすぎる声で言うから、俺もつられて泣きそうになる。

翔「僕にとって素敵な人はA先生だけです……」

『……ごめんなさい』

翔「いえ……」

ハンカチで涙を抑えながら、ぽつりと呟いた。

『櫻井先生みたいな男性を好きになれたら良かったのに……』

翔「……ダメですか、僕じゃ」

『はい……。だって櫻井先生は“A先生”しか見てないから』

「え？」

『A先生は仕事以外だと、櫻井先生が思ってるよりもずっと自堕落で、根暗で、普段はニコニコなんかしない人間ですから』

翔「それでも僕は……！」

口角を上げ、切なく微笑んで俺を見つめてくるA先生。

それからゆっくり首を横に振る。

『お気持ちはとても嬉しいです。ありがとうございます。同僚として櫻井先生を尊敬しています』

翔「はい……」

『お手洗い、行ってきますね？』

そう言いながら、握られていた俺の手を優しく離して席を立った。