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「腹空いてねぇかもしんねぇけど、ちょっと飲みに行かね？」
『んー。帰って授業で使う教材も作りたいから帰る』
ねぇ、この温度差、何？
俺だけめちゃくちゃ好きじゃん！
何でこんなにあっさりしてんの？
むかつくんだけど！
「いや、あのさ。久々に会ってね？元カレと元カノの関係だけども。この空白の10年の月日を語りたいと思わないか？俺は語りたいし、知りたいよ」
『過去のことは知りたくない。興味ない』
「何なんだよ。冷たくねぇか？もうちょっと味わえよ、この再会を！」
『ごめんけど、本当に味わうほど暇じゃないの』
「はぁ？そんな言い方しなくてもいいじゃん」
そう言うと、苛立ちを露わにした俺を見て、別れ話をした時と同じ顔をして見てくる。
だからって、ここで引き下がるわけにはいかない。
何か情報を得ない限り帰れない。
「俺はこの10年ずっとAを忘れられなかった。何年か前に、ともちゃんに海外で働いてるって聞いてからはその先々でAを探した。ずっと好きだったから」
『……嘘でしょ？そんなわけない』
「は？お前には到底分かるわけがない。別れてからも俺がどれだけお前を好きだったか、忘れられなかったか。女々しくて未練がましい男の気持ち舐めんな」
『未練がましいことに関して自信満々そうだけど、ものすごくかっこ悪いことを言ってるって気付いてるよね？』
「ああ、気付いているとも！けどな？マジで会いたかったんだから、俺に付き合え！酒のうまい店連れてけ！俺のこの10年の出来事を聞け！」
そう言ったら、ものすごく嫌そうな顔をしてきた。
何なんだ、マジで。
『いゃ……』
「嫌とは言わせん！」
『はぁ〜……？じゃあもう良いよ。うちにおいでよ。本当に忙しいの。教材作りたい。片手間で良いなら聞く』
何という雑な扱い！
しかもため息まで漏らしやがった！
「じゃあ行く……」
何度も言うが、俺は好きだからな！
翔さんに名前を呼ばれた瞬間、翔さんとの思い出が勢い良く、物凄いスピードで溢れた。
私が作ったご飯を口一杯にして美味しいって食べてくれた翔さん
私がうたた寝してしまったら、そっとお姫様抱っこしてベッドまで運んでくれたり
こっそりキスしてくれたり
今まで思い出さなかったことが、一気に色鮮やかに蘇って、涙も一緒に溢れそうになった。
苦しかったけど、幸せだったなって。
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作者名：鈴
| 作成日時：2020年1月21日 13時
