白椿【ars/S.S】 (ページ32)

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マギー「Aは手先が器用で、こういうの作るの上手いから羨ましい！日本人は手先が器用って本当ね！」

『いや、不器用な人もいるよ？アメリカ人がみんなオーバーリアクションじゃないのと一緒で』

マギー「あー、確かに。でもこういう作業嫌いじゃないでしょう？」

『まぁねぇ』

マギー「私はこういうの苦手な方だから、一緒にやってくれて助かる！」

『んっふふん』

他にも色んな国からボランティアに参加してる人がいるから

それぞれの国の言語が飛び交っていて、頭が混乱するけど

この機会に色んな国の言葉を話せるようになって、将来の仕事の幅が増えるかなって考えたら、ワクワクした。

だからどんどん自分から話しかけて、なんて言ったのか教えてもらう。

すごく大変だけど、刺激的で、楽しくて、日本にいるときよりずっと自分らしくいられるような気がした。

翔さんとコソコソ付き合って

隠れるようにデートをして

いけないことをしてるかのような恋愛はもう懲り懲りだ。

翔さんの求める女性像になれなくて、自分なんかダメだと落ち込んで

それでも優しくしてくれる翔さんに申し訳なくて

頑張るのに、翔さんが思い描くそこまで自分を持っていけなくて苦しくなるより

ずっと今の自分のが好き。

凹んだロッカー

押されて踏み外した階段

なくなった教科書やノート

切り刻まれたドレス

苦しんだそれらから逃げたけど、逃げた先には

私の知らない世界が広がっていて

どれだけ狭い世界で、狭い人間関係で生きていたのか思い知らされた。

だからもう過去は振り返らないし、今の私には翔さんと過ごした時間も思い出も必要ない。

私は私であるために、開放的に、ここで生きる。

Aと別れてもう5年近くが経った。

別れた直後から比べたら、精神状態は随分と凪いだ。

Aと行っていた店に一人で行っても悲しくなくなったし

Aの話を振られても交わせるようになったし

街中でAと歩いた道を歩いても、寂しくならないし

Aのことをふと思い出すことはあるけど、敢えて考えることはなくなったし

最大の変化といえば、Aを忘れようと部屋も引っ越した。

その時、大きな物以外はほとんどの物を買い替えたり、捨てたりしたけど

どうしてもピアスと髪を結うゴムは捨てられなかった。

未だにAとの時間と思い出を全てを無くしてしまうのが怖いから。