白椿【ars/S.S】 (ページ13)

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翔さんのマンションに着くと、手を繋いで部屋まで行く。

このマンションも、最初はすごく広くて豪華で

コンシェルジュさんまでいて怖かったけど、いつしか慣れた。

慣れって怖い。

「寒くない？」

『大丈夫。ありがとう』

部屋に着くなり、ヒールも脱いでないのに玄関で抱きしめられたから

私も翔さんの背中に手を回した。

私が車に着く直前まで、タバコを吸ってたんだろう。

鼻腔に苦くて煙たい匂いが掠めた。

「お疲れ様」

『翔さんも。パニックになるのに来てくれて、花束まで用意してくれてありがとう。ドライフラワーにする』

「ん。お祝いだからさ？出前ので悪いんだけど、ちょっとうまいもんと酒、用意したから食べよ」

『ありがとう！あんまり会場で食べてないから嬉しい』

「だと思った(笑)ドレスだと寛げないから着替えておいで？あと、ドレスはクリーニングに俺のとついでに出しとくから、置いといて」

『え？！や、良い良い！帰っても翔さんからもらったドレス眺めて浸りたいから、私がクリーニングに出すよ！』

「は？(笑)別にここに置いておいて眺めたら良いだろ」

『いや！家に持って帰る！』

「はいはい。頑固だなー」

変なやつって言われたのを流して、翔さんの家に置いてある私の部屋着に着替えた。

危ない、危ない。

裾がビリビリなのがバレるかと思った。

ドレスを脱いで確認すると、思ったより酷くて、切り込みというか

裾の方は切り刻まれた感じになってて、すごく悲しくなった。

悲しくなったのが翔さんにバレないように、ドレスを鞄にしまって深呼吸をしてから部屋を出る。

翔さんが食器やグラスを用意してくれたから、リビングのローテーブルを囲んで、ワインとおしゃれなオードブルで乾杯。

「改めまして、卒業おめでとーう！」

『ありがとーう！』

メールでしか言えなかった近況報告をもっと詳しく話したり

これ美味しいねとか

卒業式の話とかたわいもない話をして

それからお風呂に入って、お互いに髪を乾かしあって、翔さんに手を引かれて布団に潜る。

腕枕をしてくれた翔さんにもっとくっつくように、足を絡めた。

「なぁ、A？」

『んー？』

一日中気を張って、既に微睡んでいた私。

名前を呼ばれて翔さんの首筋に、目を瞑ったまま、顔を擦り付けた。

「あのさ、Aが良ければだけど、この部屋で一緒に暮らさないか？」

『え？』