白椿【ars/S.S】 (ページ12)

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『言ってもなくならないでしょ？それに翔さんが出てきたら、余計ひどくなりそうだったから』

とも「だからって、おめでたい日にまで。ドレスの後ろ、切られてるのはどうかと思うよ？」

ずっと壁に張り付いてたから、翔さんは気づいてなかったから良かった。

いつ切られたか分からないけど、触った限り、裾の方が数カ所切られてて

トイレの鏡で確認すれば良いんだけど、なんか怖くて出来なかった。

けど、下着が見えるとこまでは切られてないから、私的にはセーフ。

『翔さんの赤だからかなぁ……。違う色にしたら良かったね。紺とか、黒とか』

とも「でも先輩が買ってくれたドレスなんでしょ？」

『買うっていう相談もなしに勝手にね？(笑)翔さんは知らないから、嫌がらせされてるの。自分のだよって意味で、赤着せたかったんじゃない？それにちゃんと私が着てるかどうか確認のために迎えに来たんだよ』

とも「どんだけっ！(笑)」

『ねー。てかさ、どんな感じで切られてる？見える？』

ともちゃんに背を向けて見てもらう。

とも「んー。まぁまぁだよ。自分で確認したほうがいいかも……。こっそりね。心して見よ。私も気付かなくてごめんね。よく我慢したね。尊敬する」

『マジか(笑)怖いなー。ううん。この4年間一緒にいてくれただけで嬉しかった。ありがとう』

横に首を振って、私の肩を摩る苦笑いのともちゃん。

結局大学で確認しないまま、コートで切られたドレスを隠しながら、人混みをかき分けて翔さんの車まで走る。

春の夜はまだ寒くて、ストールをきつく巻き直した。

ピンヒールがコンクリートを打ち付けて、春の夜空に響く。

車が見えたと思ったら、運転席のドアが開いて、翔さんが出てきた。

「おめでとう。よく頑張ったな？」
　

頭を撫でてくれたら、トランクからピンクのチューリップと、かすみ草の花束を取って渡してくれた。

『わぁ……可愛い！ありがとう！』

「Aのほうが可愛いよ。ほら寒いから早く乗って帰ろう」

私が後部座席に乗ったのを確認して、車を発進させた。

「ドレスよく似合ってる」

『そう？翔さんに選んでもらって良かった。サイズもピッタリだし』

「だろ？どんだけAを抱いてサイズ想像したか」

『変態ー』

「男はみんなそうだよ(笑)」