白椿【ars/S.S】 (ページ2)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:98,462 hit

2 ページ2

『ねぇ、翔さん』

「何。どした？」

『んー。ねぇ、翔？』

「だから何。珍しく呼び捨てなんかにして」

『……すき』

今度は俺の方に視線をくれず、オレンジ色になりかけた空に視線を逸らし

息を吐くようにその言葉を発した。

「急だな(笑)俺も好きだよ？Aが思ってるよりずっとね」

『ん。ありがとう』

「お礼言われるほどじゃねぇよ、付き合ってんだから当たり前」

嵐といえど俺も1人の男、人間だから、当然恋愛はする。

たまーに適当に摘み食いすることもなくもないが

真面目に付き合うこともある。

因みにAとは今の状況も踏まえて、それなりに真剣に付き合ってる。

実際この先どうなるかはなんとも言えないし、根拠はないものの

Aとなら、ずっと穏やかに過ごせるような気がしていて

A次第では結婚も良いのかなとか思っちゃったりなんかしてる。

もちろんAにはそんなこと言わないけどね。

『ねぇ、翔さん。私がいなくなったらどうする？』

久しぶりに俺をしっかりと瞳に映したと思ったら、なかなか真剣な顔つきで聞いてくる。

「は？どういうこと？」

『そのままの意味。どっか遠くに行っちゃったら悲しい？』

「そりゃあ……悲しいよ？」

この問いが唐突すぎて、どういう心理で聞かれたか、いまいち理解できない。

『あー！変な間があった。本当はそうでもなかったりしてぇ』

なんて言いながら、訝しげに俺を睨んできた。

「違うって。悲しいけど、Aのやりたいことが遠くでしか出来ないなら応援するって意味」

『あー……翔さんは優しいねぇ』

「ほんとにそう思ったんだか分かんねぇ言い方だな(笑)」

『思ってますよ？翔さんが世界でいっちばん優しいって』

「それはわざとらしすぎる言い方！」

『んっふふ』

長く濃いまつ毛を伏せて、頬に影を作って綺麗に笑うと真剣さが無くなった。

さっき……この笑顔が見たかったんだ。

この笑顔を見れる度に大好きが溢れる。

今度はお互い微笑み合うと、机の下でいたずらに足を絡め

机の上ではAの指先だけが冷たくなった小さな手を、俺の手で包み込んで

夕陽に照らされた俺たちは、どちらからともなく顔を寄せてキスをした。

お互いの唇を確かめるように何度も何度も。

いつもなんだけど、こういうキスをする度、Aの口角が上がって微笑んでいるのが目を閉じていても分かる。