鈴蘭の咲く頃8【ars/S.S】 (ページ22)

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「ごめん、ごめん。フライパン一つじゃ大変かと思ってさぁ。一応、コンロは三口なんで」

『あ、ほんとだぁ！助かる～！これで作るの捗る！』

「だろ？Aはそう言ってくれると思ったよ(笑)」

料理をしない俺からしたら三口なんて必要ないもんな。

『では、明日、私は飯炊きばばぁに変身させていただきます』

そう言って、急にご丁寧にお辞儀をしながら言うからすげぇ笑える。

「あっはっはっは！何だそれ！」

しかもAの口からばばぁって(笑)

『お兄ちゃんに言われたの。お前、向こう行ってまで翔の飯の世話かよ。飯炊きばばぁだなって。ばばぁじゃないのに！！』

あぁ、なら納得。

「Aが怒るところそこなの？」

『えっ？ばばぁでしょ？他に怒るところないし』

「自分で頼んどいてなんだけど、俺のご飯の世話にまず怒るべきじゃね？それこそこっちまで来てんのに、家事かよって。ゆっくりしたいし、観光もしたいでしょ」

『あー。そこは別に。1日で終わらせる自信あるし。ていうかさ、翔くん、顔丸いんだけど。太った？(笑)』

画面越しじゃあんまりわかんなかったけどって言いながら、俺の両頬をつまむ。

「えっ(笑)バレました？外食ばっかしで、カロリーがね」

『翔くん、すぐ顔パンパンになるから気をつけてねって言ったのにぃ。国民的ヒーローのあんぱんみたいだよ』

「マジかよ！やべーなそれ！Aに俺の脂肪分けてやらねぇと！」

自分の頬をつまんで、Aの顔につける振りをする。

「いらないし。もっともいらないものだし」

って、しっしって手を払ってくる。

「わ、いらねぇって言われたぁ(笑)」

「『あっはっはっは！』」

『おもしろい！』
「おもしれぇな？」

久しぶりに顔を見てくだらないことで顔を合わせながら笑い合ってるのが、嬉しくて、楽しくて、幸せで、笑いが止まらない。

『んふふ、あー、ほんとおもしろい。ねぇ、明日スーパー連れてってね？一緒にお買い物しよ！絶対荷物たくさんになるから』

「ですね(笑)よろしくお願いします」

『お任せください！ところでさ、荷物はどうしたら良いの？』

「あ、ベッドルームに置いといて。こっち」

Aの手と、スーツケースを引いてベッドルームに向かう。