鈴蘭の咲く頃8【ars/S.S】 (ページ21)

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『あのね、翔くんの手、あったかい。それからキスも……。柔らかくて、タバコの味がちゃんとした。あと、香水の匂い。全部全部ちゃんと伝わってきた』

「うん。いつもは画面だしな？だから短いけど、思う存分、そのちっせぇ身体で翔君を感じてくださいよ？」

『うん！！』

タクシーに乗って、運転手に住所を伝えてアパートに向かう。

タクシーの中でも話は尽きなくて、アサちゃん達と何して遊んだとか

専門時代の友達とご飯食べたとか

あの映画を見たとか、Aのたわいもない話をうんうんって聞いた。

スカイプで話してるとはいえ、話せる時間もそんなに長くは取れないから、こうやって聞いて、話せるのが嬉しい。

『ここが翔くんが借りてるところ？』

アパートに行く前に、途中今日は疲れてるだろうからスーパーに寄って夜ご飯を買ってから

アパートに向かって、Aのスーツケースを持ってやって2人で部屋に入る。

「そうだよ。まぁ会社から家賃出てるから光熱費だけを払ってるだけなんだけど」

『そうなんだ。じゃあ、お部屋に文句言えないね。ユニットバスでも』

「な？まぁ2年の我慢だな。どうぞ」

『靴……のままだよね？』

「そうなんだけど、砂だらけになるから、スリッパ(笑)掃除すんの面倒だからさ」

『だよね。ありがと！ていうかさ、今のアパートより広いね！そして、翔くんの部屋にしては綺麗……』

「だろ？掃除大変だったんだぞ？Aに汚ねぇって言われたくないからさぁ」

『ごめんね？わぁ！ベランダ広ーい！』

リビングの窓に駆け寄って、これまた無駄に広いベランダに驚くA。

「そこも無駄に広いんだぜ？この分も削ったら絶対トイレと風呂別にできたと思うんだけど」

『あはは！ねぇ！でもスーパーも、レストラン？も何軒か近くにあるんだね。便利じゃん』

「レストランほぼ毎日行ってるからな。さすがにメニュー食べ尽くしたわ」

『あっ！そうそう！お鍋！２つも持ってきたからすっごい重かったんだからね！』

一応深めのフライパンだけは買ったんだけど、俺、料理全然ダメだから

Aにお願いして、Aの手料理を冷凍して欲しいって頼んだんだよね。

そしたらちょっとの間はAの作ったご飯が食べられるし。

調味料はこっちの日本のスーパーで買えばいいけど、鍋は持って帰っても何個もいらないから、Aに持ってきてもらったんだ。