鈴蘭の咲く頃4【ars/S.S】 (ページ26)

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2人で抜けるような青空をぼーっと見上げれば

繋がれた俺の左手とAちゃんの右手が隙間なく絡み合ってて

どちらからともなく、ギュッギュって強く握る。

『翔くん、連れてきてくれてありがとうございます。なんというか……夏の爽やかな感じじゃなくて、少し儚くて、綺麗でロマンチックです。とっても。秋の森林浴』

「いいえ。秋の美しい情景へシンデレラをお連れできて、嬉しいです」

『んふふ、またシンデレラ……。いつまでシンデレラって呼ぶつもりですか？恥ずかしいんですけど』

「……死ぬまでずっとだよ」

『死ぬまで、一緒に居てくれるんですか……？(笑)』

「うん。Aちゃんとさ、遊びで付き合ってるわけじゃないから。ちゃんと考えてるよ。まだね、そんな風に考えられないかも知んないけど、俺は真剣に考えてるから」

『翔くん……///』

「っていう俺の願望ね？そうなったら嬉しいなって。ていうか俺、超重くない？(笑)結婚願望ある男とか、自分で言っといて引くわー」

初めての旅行だからか、開放的な気分なのか、ちょっと真剣なことを思わず口にしたのが、恥ずかしくて

空を見上げながら、乾いた声で、自嘲気味に笑って言うと

『ありがとう、ございます……///嬉しいです』

って、恥ずかしそうにはにかんで言ってくれるから、俺まで笑顔が移ってなんか良かったなって思う。

「ね、Aちゃん……？こっち向いて？」

綺麗に色付いた木々に囲まれて、爽やかな秋風に頬を撫でられながら

優しくAちゃんの肩を抱き寄せて、見つめ合うと、お互いの唇をそっと重ねる。

唇を離せば、おでことおでこをくっつけて、クスクス笑って、また触れるだけのキス。

「好きだよ、A」

『私も、好きです……///』

誰もいない秋の匂いが立ち込める空間に、俺たちの甘い甘い空気がゆっくり漂っていく。

『あ、翔くんの頭に……ほら、紅葉』

綺麗に笑ってから、そっと俺の頭に落ちてきた紅葉を取ってくれて

さっき取った紅葉と、俺の頭に落ちてきた紅葉を大切そうに見つめて、手帳に挟んだ。

『思い出にしおりか何かにします』

「ん、そうだね。じゃあそろそろ行きましょうか？」

『はい』

来た道をまたゆっくり紅葉を見ながら歩いて

時々目が合えば微笑みあって、手をギュッギュってして。

時々肩がぶつかるほど、寄り添って歩く。