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「大変お待たせいたしました。」
黄百合に手伝ってもらい、化粧も着物もいつも通りに済ませ、元居た部屋の障子を開け放てば、部屋の真ん中で酒をちびりちびりと飲む娘と、酔いが覚めたらしい父親が、酷く冷めた目をして座っていた。
そして、恐れるように緑菊、紫薔薇、赤桜が身を寄せ合っていた。
彼等も相当頑張ってくれたのだろう。
それでもこんなに怯えているということは、よっぽどの脅しがあったと見える。
「娘から全て聞いておる。随分と舐めた真似をしてくれたそうじゃあないか、Aさんよ。」
「黄百合から私が下がった後の事は聞いております。大変申し訳ありませんでした。」
「それだけではない。禿が舞妓を演じるとは、君も含めて教育がなってないんじゃないか?ん?」
「仰る通りでございます。謝って済む問題ではございません。」
平謝りを繰り返す私に、痺れを切らした黄百合が何かを発しようとするのは分かっていた。
だからこそ、そう感じる前に、彼のことは手で遮っていた。
彼等も何か言いたげであったが、いつもの私と明らかに違う様子に、言葉を飲み込んでくれている。
けれど、そんな彼等に追い討ちをかける言葉が放たれてしまった。
「決定だな。黄百合を私の娘に寄越しなさい。」
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黄百合が絶望するのを肌で感じた。
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ちょこ2(パソコン変わりました≪元ID 5ad0b4ef6a≫)) - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみにまってます!(´;ω;`) (10月3日 23時) (レス) @page43 id: c7ac99c812 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - おっもしろいな〜!!!!! (2021年9月28日 15時) (レス) @page36 id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)
Haoto(プロフ) - すごく続きが気になる終わりかただ~…。面白いので、更新、できたらで良いので書いてもらえたらすごく嬉しいです…!! (2021年8月30日 3時) (レス) id: e9d14425e3 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 応援してます!頑張ってください! (2021年8月14日 14時) (レス) id: 5ba492e76b (このIDを非表示/違反報告)
しろ時雨(プロフ) - 主人公がかっこいい!憧れます! (2021年8月10日 8時) (レス) id: b4c51071c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雫月 彗 | 作成日時:2019年12月29日 19時