三十四 ページ4
「まったく....どこいっちゃったんだろうね....」
吹き抜ける風に運ばれて散る薄桃色の花びらを眺めながらボソッとつぶやく硝子
高専の階段に腰かけながらタバコを吹かしている彼女を横目で見ながら、彼女が見つめてる方を意味もなく見つめる
12月に未登録の帳が確認されたことは知ってる
その場所が華血家だということも、もちろん犠牲者が出たことも知ってる
それを知って正直1番こたえたのは悟だと思う
さぁっと吹いていく風を肌で感じていると、後ろから誰かが歩いてきてどかっと私の横に腰を下ろした
「何バカみてぇにぼーっとしてんだよ」
いつものように丸いサングラスをムカつくほど華麗にき着こなした悟
その表情はどことなく沈んでいるように見える
「今の君には言われたくないな」
「ウケる」と遠くを見つめながら乾いた笑いをこぼす硝子を横目に私は言う
2年生になって１ヶ月、Aの行方が分からなくなってから約半年が立つ
そろそろ高二の気分になってもいいはずなのだが
4月に普通の学校らしい始業式を迎えた後からたまにこう言う意味の無い時間を過ごすときがある
なんだかんだ言って私達もAのことをいつの間にか1人の仲間のように思っていたらしい
あまり簡単に心を許そうとした覚えはないのだが、驚きだ
「んで？今日なんで俺ら呼ばれたわけ」
「夜蛾先生が直々に任務終わりにすぐ収集かけるなんて珍しいからね」
「どーせ次の任務のことでしょ」
まあ、そんなところだよね
「はぁ....」
カラッと飴を舐めながら溜息をつき、気だるそうに腰をあげる悟に続き、硝子も携帯用の灰皿にタバコを擦り付けポケットにしまう
「.....行くか...」
ボソッと咲き誇る桜を見ながら高専の門をくぐる悟の後に
私たちは続いた
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作者名：ホウ酸 | 作成日時：2020年12月27日 17時
