スノードロップ【HiranoSho】 (ページ27)

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27 you ページ27

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紫耀くんに拒否された気がして悲しくなる。

あくまでも彼は仕事のお客様でしかないのに。

掃除機を手に取り、自動ボタンを押そうとした手を引っ込める。
隣の寝室で体をやすめる紫耀くんのことを思い出したから。

「このモフモフでも十分…」

リビングの端から端まで、床を綺麗に磨き上げていく。

ｼｬﾘｯ

棚の下の隙間を掃除していると、女性物のネックレスが顔を表す。

「ッ、」

紫耀くんの何物でもない私が、何故かそれを見て嫉妬という感情を抱いた。

同時に、また裏切られたと感じた。

彼女のひとりやふたり、居るよね。

カッコイイもん。優しいし、天然だけど男らしい。

『これ、ありがとう。』

突然振ってくる言葉に動揺する。

いつの間にか、リビングに来ていたらしい。

「す、すみません気付かず！」

『なんかあった？』

「いえ、」

咄嗟にポケットに隠したネックレス。

単純に彼の口から事実を聞くのが怖かった。

「今日の業務は終わったので、これ洗ったら帰りますね。」

お粥鍋の乗ったお盆を受け取り、紫耀くんと目も合わせずに足早にその場から立ち去る。

これ以上、彼と同じ空間にいるとボロが出そうで。

まだ少し定期清掃箇所は残っていたけど、明日でいっかと家政婦失格なことを考える。

片付けを終え、帰宅準備をしているとそれまで口を開かなかった紫耀くんがモゾモゾと口を動かす。

「平野さん、もう一度お願いできますか？」

『あの、もう少し居てくれん？お金なら、払うから。』

所詮お金だけの関係、ちょっと言葉に語弊があるかもしれないけど、そんな関係だと突き付けられてるよう。

わざわざお金のことなんか言わないでいいのに。

「分かりました。何をすればいいですか？」

コートを置いて問いかけると返ってきたのは意外な返事で。

『俺が寝るまで、ベッドの横に居て欲しい』

思わず子供か、とツッコミそうになるのを抑えて。

「分かりました、ではまずお風呂に入ってはいかがですか？その匂いでは落ち着かないと思います。」

皮肉も込めて言った言葉に、『ほんとだクサっ、シャワー浴びよ』とだけ反応して寝巻きを取りに寝室の方へ向かっていった。

「 10分だけください！」

その後ろをトタトタと着いていって、叫ぶ。

いつもどうしてるか分からないけど、

こういう時くらい湯船に浸かって温まってほしい。