ネジ6つ ページ7
では、と言いながらAは立ち上がる。
コナンはまだ動く気配がない。
「…何か?」
「もう少し一緒にいたいんだけど…だめ?」
Aはきょとんとする。
「何故?」
「お姉さんが好きだからだってば」
「私とあなたは初対面なのに、どうしてですか?」
「話したのは初めてだけど。でも僕はあなたが初めてここにきた時から素敵な人だなって思ってたんだ」
目で追ううちに好きになっていた。…いいや、初めから好きだったのかもしれない。
コナンは心の中でそう考えて目を細めた。
一方のAは、ピンとこない様子である。
「だからさ、こうしてやっと話ができて嬉しくて!…でも、お姉さんもそろそろ帰らなきゃだよね。」
健気な子供感を全開にして笑ってから、途端に少ししゅんとした顔をするコナンに、安室は下げていた頭を勢いよく持ち上げた。
店内を一目見回して、客足が無くなってきて注文も無さそうな雰囲気であることを確認してから大急ぎでカウンターを出る。
「外はもう暗いし、途中まで一緒に帰ろうよ!」
「じゃあ僕が彼女を家まで送るよ。君のお家はすぐ上だろう?」
…間に合った!
しっかりいつも通りの顔を作って良いタイミングでコナンの後ろから話しかける。
コナンがばっと振り向いて睨みつけてくる。
ふん、僕だってやられてばかりじゃいられないさ…。
挑発的な笑みを浮かべる安室。
ここまでの一連の演出がしたいがためだけに彼が大至急カウンターを飛び出してきたことは誰も知らない。
「いいですよね?梓さん」
「ああはい、Aさんが心配ですし。お客さんも少ないのでちょっとくらいなら大丈夫ですよ」
予想通りの返答を得て、安室はにっこりしながらエスコートの手を差し出す。
「それでは、どうぞ僕の車に…」
「いえ、私は別に」
「わあー安室さんの車乗せてくれるんだ〜〜〜!?ありがとう安室さん!!」
コナンは安室の手を引っ掴んで下ろさせる。
「ちょっとコナンくん、君は早く帰ったらどうだ」
「僕今日博士んち泊まるから。」
ぷいっとそっぽをむくコナン。安室はしゃがんで握られた手にぐっと力を入れた。
「ホォーー…じゃあ先に君を送ってあげようかな。その後僕は彼女を家まで届けることにするよ」
「僕は別に後でいいよ。先にAさんでしょ?」
おでこを付き合わせるようにして睨み合う。絶対に自分より先に彼女の家を知られてなるものか。
両者1歩も譲れない戦いが始まった…。
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Mito - すごくいい作品ですね 私はこの作品が大好きですよ (2021年3月28日 23時) (レス) id: 121f4f7b22 (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - コメントありがとうございます!色々読んで頂けているようで、ありがたい限りです!(まさかほろにがクラゲさんからコメントを頂けるとは思っておりませんでした、光栄です!こちらこそ応援してます!) (2019年12月6日 14時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - はちゃめちゃに名作でした…おかしいな、と思ったことをそのまま世界観にしてしまう発想が素敵・:*+.\(( °∀° ))/.:+連載中の他作品も読んでます、いつも細部の凝り方がすさまじいなと圧倒されます……これからも応援してますね!! (2019年12月5日 18時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - シンアさん» 最後まで応援ありがとうございました!これからもお楽しみいただける作品を作れるよう頑張ります! (2019年4月22日 21時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした…。また作品楽しみに待っています。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: f6e4c29514 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水落 | 作成日時:2018年11月3日 18時