ネジ5つ ページ6
しばらくして、安室の休憩時間は終わりを告げる。
惜しみながら席を離れたものの、隙があればAの近くを通りコナンを牽制することに余念が無い。
コナンのほうはそんな安室を全く気にしておらず、見せつけるようにAにぴったりくっついてじっと手元を見ている。
結局歯ぎしりするのは安室のみであった。
「うう…だからあの二人を近付けたくなかったんだ…コナンくんの小悪魔め…!」
料理の合間に2人へ恨めしい視線を送る。それに気付いてか、コナンが安室を振り返った。
「……ふっ」
余裕そうに笑ってコナンはさらに宿題を終えたAにすりよる。
「お姉さん、終わった?じゃあ僕と少し話さない?」
「虫とか渡してこないなら」
「あはは、だからしないってば」
嫉妬に眩みかけている安室の目には2人がもうとても親密になっているように見えた。実際はAは通常運転であったけれど。
近い…近すぎる、今日初めて話したばかりなのに!彼のあの距離の詰め方の上手さはなんなんだ、クソ…!
「小学生になりたい…!」
小学生であれば、世間体さえ許せば自分だって。
もっと多少強引に物理的な距離を縮めることだって容易だったのに。
…のに、悲しいかな安室はもう未成年の枠を出てしばらく経っている。
今の自分が彼と同じ行動をしたってAは気にもかけないだろうが、流石に常識と己の心が許さない。
もう立派な大人なのだ。あれが自分の中で許せるくらいの関係を築くまでは我慢せねばならない。
そうだ…大人には大人の距離感がある。近付くだけが好意の物差しではないんだ。
ふぅ、と息を吐いて安室は平常心を取り戻した。
しかし直後にその平常心は粉々にされる。
「な…な……」
2人はお互いのスマホを取り出して何かしている。
何か、とはいってもしていることは明白だ。
「連絡先……交換してる…………」
安室が葛藤に葛藤を重ね機会を伺い続けていたことを、コナンは初めて話したその日のうちにやってみせた。
安室は色々と難しい立場にいるので仕方ないことではあるが、それでもやはりショックだ。
安室はキッチンに手をついてガクンと俯いた。
「…ねえ、もしかしてお姉さんさ、安室さんと連絡先交換してない?」
「聞かれてないので」
「ああーそっか…」
まあ難しいよな、トリプルフェイス的に。
コナンはあからさまに落ち込んでいる安室に若干同情しつつ、スマホを大事そうにしまった。
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Mito - すごくいい作品ですね 私はこの作品が大好きですよ (2021年3月28日 23時) (レス) id: 121f4f7b22 (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - コメントありがとうございます!色々読んで頂けているようで、ありがたい限りです!(まさかほろにがクラゲさんからコメントを頂けるとは思っておりませんでした、光栄です!こちらこそ応援してます!) (2019年12月6日 14時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
ほろにがクラゲ(プロフ) - はちゃめちゃに名作でした…おかしいな、と思ったことをそのまま世界観にしてしまう発想が素敵・:*+.\(( °∀° ))/.:+連載中の他作品も読んでます、いつも細部の凝り方がすさまじいなと圧倒されます……これからも応援してますね!! (2019年12月5日 18時) (レス) id: 9807b016db (このIDを非表示/違反報告)
水落(プロフ) - シンアさん» 最後まで応援ありがとうございました!これからもお楽しみいただける作品を作れるよう頑張ります! (2019年4月22日 21時) (レス) id: 1398ffddc4 (このIDを非表示/違反報告)
シンア - 完結おめでとうございます。お疲れ様でした…。また作品楽しみに待っています。 (2019年4月22日 17時) (レス) id: f6e4c29514 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水落 | 作成日時:2018年11月3日 18時