【男主】人生記【eoh.eoh】

117枚目 ページ24

キイ、と門を開けるとAが野良猫と遊んでいた。
野良猫は俺の姿を見ると逃げるように走っていった。

｢終わった？｣

無言で頷いたのを見るとAは行こう、と笑った。
本人が一番辛いはずなのに泣かずに笑っている。
俺はなんて情けない。

｢A｣
｢はーい？｣
｢何か、したい事あるか｣

食べたいものは？行きたいところは？
会いたい人は？言いたいことは？

こんなの聞いても自分の自己満足でしかないってことはわかっている。

｢4人とゲームしたい｣
｢食べたいものは｣
｢たい焼き、ポテト、お菓子｣
｢行きたいところは｣
｢北海道｣
｢会いたい人は｣
｢……えおさんと一緒にいたいな｣
｢言いたいこと、は｣

Aが止まった。
口を少し開けて俺をまっすぐ見つめている。

いじくっていた服のボタンから手が離れている。

｢なんで……｣

雫が一粒落ちるのを合図にAは下を向いた。

｢なんで俺が死ななくちゃいけないんだよ！
俺が何したんだよ！今まで我慢して我慢してやっとだっていうのに！！死にたくない！生きていたい！ふざけんな！！死ぬならもっとどうでもいいヤツにしろよ！いらない奴なんかこの世に溢れてる！なんで……なんで……｣

住宅街に響く声。
この世に訴える声。
誰かの記憶から消えてしまう声。
俺の心に響く声。

崩れてその場に座り込むAを包み込み、俺は涙をこぼした。

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