【文スト】新人って辛いよね。【男主】 (ページ9)

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turned ページ9

「…っう、…！！」

鈍く響く頭痛で目を覚ました。

「漸く、目を覚ましたようだね。」

目の前の男は楽しそうに近寄ってくる。

「此処は？」

男は俺の質問に答える素振りを見せずに狭い部屋の端へ歩いて行った。

どうやら此処は尋問部屋…というより拷問部屋のようだ。

当然、俺はコンクリートの壁に手錠で拘束されているわけだし、何より周りに広がる赤黒い染みと部屋の匂いで見当はついた。

部屋の端へ行った男は手に俺を殴ったであろう拳銃を構えてこちらへ寄ってきた。

「私も手を煩わせたくないんだ。素直に吐いてもらうのが一番だと私は思うよ。」

素直に吐く…か。

ならばこの際、全て話してやろう。

そして俺は一度、息を吸って口を開いた。

「俺は組織には所属していない。スラムで育った貧相な子供だ。他のスラムの子供と違う点は一つだけ。それは俺が、横浜の夜を騒がす切り裂き魔ということだけだ。」

すると目の前の男は興味深そうにこちらへ目を向けた。

「へぇ…君が噂の。…少し気が変わった。」

まだ話は途中だったが男は俺の拘束を解いた。

「何故、解いた？切り裂き魔だぞ？今からあんたの喉掻っ切ることも出来るんだぜ？」

そう言いながら上着のポケットに手を入れたがあるものが消えていた。

「あぁ、もしかしてこれ？君を捕らえた時に危険だと思って私が預かっていたんだ。はい、どうぞ。」

ナイフが無い時点で俺は終わったと思ったがまさか相手から返されるとは思っても見なかった。

「あんた、理解できねぇよ。危険分子を潰すと言ったことに矛盾してる。」

「おや、そんなこと言ったかな。まぁ、いいじゃないか。切り裂き魔くん。」

俺はこの男が不審で仕方なかった。

だがこの時、殺してしまおうとは思わなかった。

「俺が他の組織じゃないって譲明できたんだから解放しろよ。そのために解いたんだろ？」

すると男はゆっくりと首を横に振った。

「いや、君は今日から私の下に居てもらおうと思ってね。何せこの物騒な時代だ。世を騒がす切り裂き魔が護衛なら安心できるじゃないか。」

この時も男は俺に銃口を向けていた。

銃口との距離はほぼゼロ。

「っは…俺に拒否権は無い、ってか？」

そりゃ勿論。とにこやかに笑った生気のない目に俺はまた魅入られた。