飲み友達の黒尾鉄朗に今日も口説かれる【黒尾鉄朗】

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この店でAちゃんと出会ったというか見掛けたが正しい言い方かもしれない。




カウンターに座って1人で飲んでるから初めは待ち合わせかなんかだと思っていたけどいつまで待ってもそれらしき人は来ないし、時々携帯を見ては少し泣きそうな顔をしてすぐにテーブルに携帯を伏せるように置く。
2.3杯飲んで満足したのか彼女は席を立って会計を済ませ店を出ていく。

その時彼女の左手薬指に指輪が嵌められているのが目に入った。
彼氏いんのかよと思ったが、彼氏とやらはあんなに可愛い彼女の迎えには来ないらしい。



ある日、
『この卵焼き凄く美味しい！』
なんて彼女が店主とカウンター越しに会話してるのが聞こえ思わず意識がそっちに向けば『私も料理上手だったらなあ〜』と何処か泣きそうな声。

彼女が横髪を耳に掛けた時に見えた今にも泣きそうな横顔と指輪が外された左手薬指。







「なあ、研磨。
女の子が指輪外したって事は彼氏と別れたってことだよな？」


俺の前に座って退屈そうに携帯を弄る研磨に聞けば「そうなんじゃない？」と、大して興味なさそうに答えが返ってくる。





その光景を見て数日経った週末、また彼女はカウンターで2杯目のレモンサワーを飲み干す顔はやっぱり辛そうで、もうほっとけなかった俺は初めて彼女に声を掛けた。







────「飲み過ぎなんじゃねーの？」

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