飲み友達の黒尾鉄朗に今日も口説かれる【黒尾鉄朗】

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そんな私の様子に気が付いたのか

「気にすんなよ」と言いながらお酒を口に入れた鉄朗。



気にしてないと言えば嘘になるし、気にしてると言えば気を遣わせてしまう気がして曖昧な相槌をうつしかなかった。




『…でも久しぶりに凄く楽しかったし、ご飯もお酒も美味しくて幸せ！
鉄朗、誘ってくれてありがとう』



在り来りだとしても今１番伝えたかった私の本音。



大学卒業後は友達とも予定が合わなくて中々遊べなかったし太一くんとの関係も付き合っていてもあんな感じだったから、誰かと休日に出掛けるなんて久しぶりで心の底から楽しかった。


太一くんと別れてからは空腹を満たす為だけの食事は美味しくはなかったし、ヤケ酒のように飲むお酒は味が美味しいというよりも、アルコールが回り頭がフワフワして無意識に早く酔ってしまいたいだけだったのかもしれない。



「そ？
なら良かったです」


目を細め微笑みながら残り少なくなったグラスに入ったビールを飲み干す鉄朗が、大人な落ち着いた雰囲気の店内と薄暗いライトに相まって妙に色っぽく見えて、些細な仕草にも見惚れてしまう。



そんな自分の心情を隠すように慌ててビールを喉に流し込んでみてもドキドキと心臓は煩いし、いつもどんな話しを鉄朗としていたかさえ思い出せない。


働かない頭と口から漸く絞り出した

『研磨さん元気？』という本当に他愛もない質問に「元気だよ」と頭にはてなマークを浮かべながら答える鉄朗に、適当な相槌で返して食後のチョコレートケーキの最後の一口を口に入れる。



いつもの飲み屋にはない甘ったるい濃厚なチョコレートケーキの甘さが口いっぱいに広がる。

不意に目の前に座ってる鉄朗に視線をやれば、柔らかく微笑む鉄朗と目が合い

「可愛い」と一言。


チョコレートケーキも鉄朗の言葉一つ一つもこの雰囲気も全部が甘ったるくて、どう返していいのか分からなくなり赤くなった顔を膝に置いていた布巾で口元を拭くことで誤魔化した。

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