飲み友達の黒尾鉄朗に今日も口説かれる【黒尾鉄朗】

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館内に入れば友達同士だったり家族連れやカップルで来ていて、夏のイメージの水族館は冬でもたくさんの人で賑わっている。



ゆったりと見て回れば、小魚の大群やフワフワと浮かぶクラゲやクリオネはライトで照らせれていて幻想的で思わず見入ってしまうほど。



ある看板とその横に立つ職員さんが目に入り不意に『あっ！』と声が出ると、鉄朗も同じ物を見たのか「行きますか！」と言った鉄朗の手を、少し私の方が強引に引っ張り目的のものが行われる中へ向かった。




『イルカショー見るの久しぶりな気がする！』

記憶が正しければ小学生の時の遠足以来のイルカショーに、見る前からワクワクが止まらない。


「ほい、これ」と先程職員さんに貰った膝掛けをさりげなく掛けてくれる鉄朗にドキッとした。



３０〜４０分程のイルカショーもあっという間に終わり、館内も見尽くし早めの昼兼夜ご飯に連れてきてくれたのはカジュアルなイタリアン。


お互い１杯目のビールのグラスを静かにカチャンと乾杯すれば、夕方から飲めるなんて幸せだね〜と言葉がシンクロした。


『今日すごく楽しかった！
イルカショーも凄かったし！』


興奮気味に私が話せば「俺もすげぇ楽しかった」と優しく微笑む鉄朗と目が合い、ビールを一口しか飲んでいないのに顔が赤くなる感覚。


少し前までは顔が赤くなってもお酒の所為だと思い込んでいたけど、今は違うんだと鉄朗への気持ちを実感すれば今のこの状況でさえ心臓がドキドキと煩く、料理もお酒の味も分からなくなる。



「２人で飲むの久しぶりだよな」


年末にいつもの飲み屋で酔っ払った鉄朗と会った日以来だったし、太一くんとの事も思い出し鉄朗は気にしていないのかもしれないけど、なんだか少し気まずくなり視線をビールの入っているグラスに落とした。

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